NHKの中継では、元JR東海監督の大矢正成氏(63)が解説を務めた。大矢氏が甲子園で解説するのは、この日が最後。閉会式が終わると、球児たちへのメッセージで締めた。

「毎試合、解説をするとき、野球小僧の気持ちで臨んでました。本当に、うれしくて仕方がない、夢のような時間でありました。かつてですね、池田高校の蔦監督が初めて甲子園に出場されたとき、『山あいの町の子どもたちに1度でいいから大海を見せてやりたいんじゃ』とおっしゃいました。私は、この言葉が大好きです。蔦監督の万感の思いが詰まっている。そんな感じがします。それほど、甲子園は価値のある夢舞台だと思います。高校野球は後々の人生に生かされることが、たくさん詰まっています。世の中、社会に出ますと、思い通りにいかないこと、つらいことがたくさんあります。そんなとき、高校野球で学んだこと、そして野球を通して鍛えられた強い心があれば、きっと乗り越えられると思います。球児の皆さんには、野球のおかげで今後も幸せな人生を歩んでほしいなと思います。最後になりましたが、45年前と同じ決勝戦の舞台で、こういった解説をさせていただきまして、本当に思い出深い甲子園球場を、しっかり目に焼き付けて、あいさつ申し上げます。長い間、本当にありがとうございました。お世話になりました」

大矢氏は45年前、東邦(愛知)の3年だった77年夏に、甲子園準優勝。その後は法大などでプレーした。

捕手出身らしく、配球面を交えながらの分かりやすい解説。また、視聴者の興味を引く小ネタを披露することでファンも多い。この日は7回2死、仙台育英の尾形捕手がワンバウンドの投球を首に受け、治療を受けるためタイムがかかった。間をつなぐため、選手たちのヘルメットに貼られている野球伝来150年のシールを紹介。アメリカ人ホーレス・ウィルソンが日本に野球を伝え、その集大成として、この日の決勝があると語った。

ただ、意外と早く治療が終わり、話の途中で尾形がグラウンドに戻ってきた。実況の坂梨哲士アナウンサーから「お気遣い、ありがとうございます」と感謝された。

閉会式では、準優勝だった自身の思い出も披露した。「45年前の閉会式は1人1人に(メダルを)首にかけることなくて。私が全員のメダルを箱に入れて場内を1周しました。箱が重たくて。1周するとき、場内の拍手、歌声は今でも頭の中に残っています。思い出に残る行進でした」と語った。