日本文理が新津に10-0で5回コールド勝ちした。5番・近藤翼中堅手(2年)が5-0の4回無死二塁で今大会第1号、自身公式戦初本塁打の2ランを左翼に放つなど2打数2安打で4打点。大会前に75歳で亡くなった祖父斎藤賢一さんに活躍と勝利を届けた。

こらえていた涙があふれた。「両親が『空を見上げたらおじいちゃんがいるから』と言っていたので…」。日本文理・近藤はハードオフ新潟を包んだ青空の向こうにいる祖父賢一さんに届けようと、アーチをかけた。

4回裏無死二塁、3球目の内角高めのカーブをとらえて左翼席に運んだ。公式戦初本塁打は「おじいちゃんが打たせてくれた」。初球は一塁方向への邪飛だったが捕球されなかった。「助かった。タイミングが合っていなかったので、次も変化球がくる」。1ボールを挟んで3球目を思いきり振り抜いた。

初戦の2回戦、9日の村上桜ケ丘戦の終了直後に訃報を聞き、その場で号泣した。すぐに埼玉の実家に帰り、賢一さんに別れを告げた。新潟に戻ってきたのは12日。素振りもできず、この日はほとんどぶっつけ本番だったが気持ちは前向きだった。

「積極的に振ることを意識した」と言う。この日の1打席目は1回裏2死一、二塁から左翼線へ先制の2点二塁打。村上桜ケ丘戦では代打で出場しながら見逃し三振に終わった。そんな姿勢はなかった。「積極的に打っていた。もともと打力はある」。5番に起用した鈴木崇監督(42)は持ち味発揮をたたえた。

賢一さんとは小学生のころによくキャッチボールをした。目標はいつも応援してくれていた祖父に甲子園でプレーする姿を見せること。「センバツに行く」と固く誓った。【斎藤慎一郎】