女子野球界の大谷を目指す! 花巻東(岩手)女子硬式野球部の佐々木秋羽(しゅう)内野手(1年)は、俊足巧打を武器に8月のユース大会(新人戦)準優勝に貢献した。父は同校男子硬式野球部の洋監督(47)で、兄は同部の主将で高校通算86本塁打の麟太郎内野手(2年)。野球一家で育ち、中学時代は二刀流で陸上部にも在籍した。花巻東の全国制覇、女子プロ野球選手という2つの夢に向けてスタートを切った。

    ◇    ◇    ◇

花巻東の佐々木秋羽として1歩を踏み出した。創部3年目の女子硬式野球部に今春入部。父や兄、尊敬するエンゼルス大谷翔平投手(28)と同じユニホームに袖を通し、7月の選手権大会で全国デビューを飾った。8月のユース大会は「1番二塁」で出場。同校は全国大会16強が最高成績だったが、それを大きく上回る準優勝の原動力になった。

「小さい頃から花巻東の野球を見ていたので、ユニホームを着ることにも憧れていましたし、親子3人で甲子園で優勝したいです」

女子の高校野球は選抜、選手権、ユースの「3大大会」が日本一へ挑む舞台になる。選手権がもっとも歴史があり、昨年から決勝戦のみ甲子園開催。そこで勝つことが最大の目標だ。

幼少期は1学年上の麟太郎と常に一緒で、バットやグラブを手にするのは時間の問題だった。「兄の野球を見に行って『楽しそうだな』と感じたことや、父が野球を指導している姿を見て『自分もやってみたい』と思ったのが大きいです」。自らの意思で小学2年から野球を始めた。

江釣子中時代の秋羽は二刀流を貫いた。大谷の父徹さん(60)が監督で、麟太郎も所属した金ケ崎シニアで唯一の女子部員としてプレーし、陸上部にも在籍。昨年の岩手県中学校総合体育大会では、100メートル走で13秒21をマークし、4位入賞を果たした。

もともとは内気な性格だった。しかし、中学では兄に続いて生徒会長の大役を務めた。「本当に人見知りがすごかったですが、自分を出さないことがもったいないというか、せっかくなら堂々としたいな」と立候補。現在は「自分が先頭で何かをやることが好きです」。生徒会長の経験が成長する上で分岐点になった。

本塁打が魅力の麟太郎に対して、秋羽は小技を駆使する1番打者タイプだ。「長打ではなく、セーフティーバントとか単打を目標に足を使ったプレーを忘れずにやりたいです」。50メートル走の自己ベストは6秒8。兄の6秒9をわずかに上回るが、野球に関しては「まだまだほど遠いです」と受け止める。「兄は小さい頃からすごいですし、憧れています。でも、やっぱり負けたくない気持ちも強いです」。一番身近にいるライバルでもある。

秋羽は大きな夢を描く。

「自分は将来、女子プロ野球選手になり、誰かに憧れられるような存在になりたいなと思います。大谷翔平選手みたいに世界で通用する選手になって、女子野球を広めていきたいです」

いつの日か花巻から世界へ羽ばたく。【山田愛斗】

◆佐々木秋羽(ささき・しゅう)2006年(平18)9月29日生まれ、岩手県北上市出身。江釣子ジュニアスポーツ少年団で小学2年時から野球を始め、江釣子中時代は陸上部に在籍しながら金ケ崎シニアでプレー。22年に花巻東入学。167センチ。右投げ左打ち。背番号「16」。家族は両親と兄。