今秋ドラフト1位候補で高校通算68本塁打の高松商・浅野翔吾外野手(3年)は涙の終戦になった。8回の4点奪取で2点差に詰め寄ったが惜敗。高校ラストゲームになった。3年生に「ありがとう」と言われ、1、2年生に感謝された。

「泣かんとこうと思ったんですけど…。いろんなことがこみ上げて泣いてしまって。でも、最後、こういう試合をできてよかった。やりきりました」

目は赤くなった。完全燃焼した。下関国際に食い下がった。執念を見せたのは2-6の8回。1点を返しなお1死二、三塁、打球は左前へ。浅野は二塁から本塁突入。好返球をかいくぐり、頭から生還した。魂のヘッドスライディング。ドラフト候補である前に野球選手だった。

「リードはイチローさんに教えてもらったのを実践できた。ベースの回り方もしっかり回れた」。昨年12月にマリナーズ・イチロー氏に指導を受けた。「同じ目線で見た方がいい」。すり足でリードし、目線を一定に保つ。最後に生きた。

9月28日に巨人が1位指名を公表。阪神の1位候補にも挙がり、複数球団の競合が濃厚だ。「高校で長距離打者と言われた。上の世界でできたら中距離打者で。本塁打もヒットも打てる打者になりたい」。身長は170センチ。小さな大打者への道を歩む。【酒井俊作】

▽高松商・長尾健司監督(国体まで戦ったチームについて)「不思議なチーム。エラーして大差でも食らいついていく。浅野1人のチームではなく、みんながふてくされずに浅野を助けた」

○…プロ志望届を提出した下関国際のエース古賀康誠投手(3年)が試合をつくった。

キレのある直球とスライダー、カーブで6回2失点。高松商・浅野に対しては緩急をつけ、強気に内角を攻めるなど4打数1安打に抑えた。「甘く入ったら持っていかれるイメージだったので、工夫しました」。準決勝の大阪桐蔭戦に向けて「甲子園では自分がよくなかったのでリベンジして、粘り強い野球をしたい」と話した。