大寒波のまっただ中にいる氷見(富山)に、うれしい春の便りが届いた。21世紀枠で氷見が選ばれた。21世紀枠での出場は富山県勢初めて。

部員17人のうち16人が氷見市出身。もう1人も近隣の射水市。人口減少が顕著な地域で、選手は幼なじみのような間柄。市内唯一の高校で甲子園を目指すため、氷見高校に結集した。

昨秋の県大会では猛打を発揮し、30年ぶりに優勝。北信越大会は遊学館(石川)に延長12回の末、2-0で劇的に勝利した。エース青野拓海投手(2年)が192球で投げきった。その反動で翌日は松商学園(長野)に敗れ、一般枠での選出は厳しくなったが、21世紀枠の推薦校としては十分な戦績を作った。

大会後は県岐阜商、仙台育英(宮城)や二松学舎大付(東京)など強豪と練習試合を重ねた。秋季大会からの流れで一気にレベルの引き上げを図った。

年末には兵庫・淡路島で地獄の強化合宿に臨んだ。砂浜やアップダウンのある道をひたすら走り、総距離は2日半で108キロにおよんだ。煩悩の数といわれる「108」は偶然だが、まさに頭が真っ白になるような猛練習だったという。硬球の縫い目の数でもある縁起のいい数字に、ナインの充実感が高まり、団結は一層強まった。

村井実監督(59)は砺波工を率いて甲子園経験がある。メンタルトレーニングから得た「成信力」「苦楽力」「他喜力」の言葉をグラウンドに掲げている。中でも、他人を喜ばせる意味の「他喜力」には特別な感情を持つ。前チームが昨夏の富山大会決勝で、甲子園まであと1球から逆転され、涙をのんだ。「3年生を甲子園に連れていこう」を合言葉に、後輩たちはショックを振り払って秋季大会を戦い、見事に30年ぶりの甲子園切符をつかんだ。

65年夏、93年春の甲子園はともに初戦敗退。聖地1勝を目指している。

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