報徳学園(兵庫)は5点のビハインドから史上初となる2度目の春連覇を狙った大阪桐蔭に逆転勝ちし、21年ぶりの決勝進出を決めた。

山梨学院は春夏を通じて県勢初の決勝進出を決めた。同点の9回、4番高橋海翔内野手(3年)の決勝打から5点を奪い、広陵(広島)を下した。1日の決勝戦は午後0時半開始の予定。

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「逆転の報徳」は健在だった。石野蓮授外野手(3年)が大阪桐蔭・前田悠伍投手を攻略し、春連覇を阻止した。5点差にもひるまず、「僕たちの野球は終盤に1点ずつ積み上げて追い上げていく野球。焦ることなく1点ずつ返せた」と伝統を引き継いだ。

同点で迎えた8回1死一塁。前田の甘く入ったツーシームを捉えると、打球は左翼手の頭上を越えた。スタートを切っていた一塁走者が一気に生還。「いいピッチャーなので、しっかり割り切って、自分のポイントで振り切ることだけを考えた。大きな1点を取れて、とにかくうれしい気持ち」と決勝の二塁打に笑みがはじけた。パワーの源は母手作りのおにぎりだ。一冬で6キロ増。女手一つで育てた母春代さん(49)は毎朝4時半に起床し息子を支えた。5人兄姉の末っ子の一打に母はスタンドで初めて涙した。

5点差でもベンチでは諦める雰囲気はなかった。何度もベンチでは「タイタンズ!」の声が上がる。大会前に全員で見た高校のアメフトチームを描いた映画「タイタンズを忘れない」から着想。ミスが出たときの決めぜりふで一丸になった。夏の仙台育英、春の大阪桐蔭と続けて甲子園王者に競り勝った。今年はコロナの影響を受けていない世代ということでスローガンを「頂戦~一への拘り~」に変更。大角健二監督(42)は「『頂戦』をテーマにやってきたが、まさにそういうクジになり、その通りに勝ってきた。言葉の力は大きい」と強豪連破に驚いた。

大阪桐蔭に対しては昨秋近畿大会決勝の雪辱も果たした。前回優勝した02年春以来となる頂点へ。石野は「桐蔭に勝ってリベンジできたのが一番大きい。最後まで勝ち切って、てっぺんを取って、スタンドやお母さんに恩返しをしたい」とキッパリ。逆転の報徳が今春の主役だ。【林亮佑】

◆報徳学園がまた連覇ストッパー 仙台育英の夏春連覇を阻止した報徳学園が、大阪桐蔭の春連覇も止めた。過去には金村義明らが81年夏2回戦で横浜の夏連覇を止め、大谷智久らが02年春1回戦で日大三の夏春連覇を阻止し、それぞれ優勝している。

◆大阪桐蔭の公式戦黒星 昨秋の明治神宮大会を制した大阪桐蔭が敗退。新チーム結成以来の公式戦連勝は18でストップした。

◆逆転の報徳 報徳学園は61年夏1回戦で延長11回表、倉敷工に6点を奪われながら裏に一挙6点を取り返し、12回7-6でサヨナラ勝ち。67年夏1回戦の大宮戦は9回裏に同点に追いつき、なおも2死三塁から吉田がサヨナラ本盗。81年夏3回戦では荒木大輔の早実に8回表まで0-4とリードされるも、延長10回5-4でサヨナラ勝ち。今大会も4試合のうち高崎健康福祉大高崎戦、仙台育英戦(逆転サヨナラ)に次いで3度目の逆転勝ち。