<高校野球東東京大会:共栄学園7-2新宿>◇20日◇4回戦◇神宮球場

高校野球のドラマは、勝った者にだけ生まれているわけではない。日刊スポーツでは今夏、随時連載「君がらんまん」で、勝者だけでなく敗者にもスポットを当てた物語をお届けする。

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9回、最後の攻撃を前に、円陣で声だしを託された。新宿の長沢苺花(まい)マネジャー(3年)は「最後まで戦いましょう! さぁいこう!」と大声でナインを鼓舞。練習試合で、長沢マネジャーのここぞの声出しで打線がつながることがあった。この日も、9回に意地の1点を返した。目標の甲子園には届かなかったが、夏2勝。「3年間、いい経験になりました。勝つ楽しさを知りました」と話した。

中学では華道部と茶道部。高校に入学し、同じクラスで机が前後だった中沢志弥主将(3年)から「野球部、見に来る?」と誘われたのがきっかけで入部した。三姉妹の次女で、母・葉子さんは「野球と縁のない家族だったので、野球部と聞いて驚きました」と振り返る。野球のルールはもちろん、スコアの付け方もゼロから勉強した。今夏の前には、マネジャー陣で選手にお守りを手作り。大会に間に合わせようと徹夜した。

昨年11月、イチロー氏が指導に訪れた2日間は、体調不良でちょうど学校を欠席。みんなが握手をしてもらったと聞いてショックを受けたが「長沢さんへ」と名前入りのサイン色紙という1人だけ特別なプレゼントがあった。家で大切に飾っている。

最後の夏が終わり、仲間の顔を見ると涙がこぼれた。「きつい時間も、暑い時も、みんなで団結してやる時が印象に残っている」という。たくさんの思い出が、これからの人生を彩ってくれる。【保坂恭子】