春季大会準Vの志度が高松中央に勝利し、ベスト4に進出した。「公立高校で残っているのがうちだけなので、その火を消したくなかった」という新鞍(にいくら)幸一監督(53)の思いは実り、甲子園まであと2勝となった。

この試合では、チームの絶対的中心の新鞍護が、投打で期待に応えた。

圧巻だったのは、5-2で迎えた8回の投球。1死二、三塁のピンチを迎えるが、ここで本格派右腕は高松中央の3、4番を連続三振に。「背番号1をもらった以上、最後まで投げたいっていうのが自分の意志」と9回もマウンドに立ち、140キロ前後の速球を投げ込んだ。11安打を許したが、2点に抑えて勝利をたぐり寄せた。打っても3安打2打点と4番の仕事。投打でチームをけん引したエースは「甲子園を目標にしているチームだし、責任もあるので」と淡々と話した。

心に秘めたものを積極的に口に出すタイプではない新鞍だが、熱い思いがある。それは、監督の次男として、一緒に甲子園を目指し、勝つことに対して。

息子は「親子っていうこともあって、別に今更って感じです。話さなくてもわかるところはあると思います」と話すのに対し、「ベンチでも家でも、全然寄ってこない」と笑う父は、少し寂しそうにも見えた。

ただ、「思ってはいるけど、直接言いたくはない」という恥ずかしさがあるだけで、親への思いは揺るぎない。父は高松西(香川)の選手として、86年のセンバツに出場経験を持つ。だが聖地では秋田に敗れ、1回戦しか戦えなかった。「“あの人”は甲子園に行っているけど、1勝ができなかった。だから甲子園1勝して、勝ったところを見せたいと思っています」。目標をかなえようと、親子で最後となる夏を戦っている。

決勝が行われる26日は、父の54回目の誕生日。「そこで勝って、優勝して、いい誕生日にできたらなと思います」。香川を盛り上げる新鞍親子は、その物語を甲子園までつなげるために、次も全力で戦う。

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