76年ぶりに聖地1勝を目指した田辺(和歌山)が、昨秋明治神宮大会王者の星稜(石川)と熱戦を演じた。

1-2の4回にスクイズで追いつき、8回まで2-2と1歩も引かず。9回に星稜に引き離されたが、最後の攻撃でも主砲の山本陣世内野手(3年)が昨年までのバットならスタンドインと思われるような大飛球を放ち、超満員のアルプスを沸かせた。試合後の取材通路に現れた田中格(かく)監督(51)は開口一番「選手たちは十二分にやってくれました」と、まず教え子たちをねぎらった。

試合前から、心は騒いだ。甲子園練習で体感はしていたが、観客の入った聖地は格別だった。「すごいな、最高やな。代わってくれよ。おれ、監督より選手で出たいわ、と選手たちには言いました。すてきな場所です。本当に代わってほしかった」とOBの監督は、興奮を抑えられなかった。昨秋の県予選で市和歌山、智弁和歌山など強豪を撃破してつかんだセンバツ切符。切符の重みを実感した。

熱闘を終え、夏も必ず…の思いは、いっそう強くなった。「星稜さんにはないようなミスがあった。そのミスをなくして、夏に向けて詰めていきたい」と目標は明確に。4失点完投のエース寺西邦右(ほうすけ=3年)は「甲子園は憧れの舞台だったので、そこで投げられたっていうのはやっぱり自分にとって財産になるなと思ってます。夏に向けて、自分の今日の試合でダメだったところを改善して万全の状態でまた甲子園に戻ってきたい」と目標は明確に。マウンドにも打席にも届いた大声援を「とてもうれしかった」とかみしめた。忘れられない思い出を胸に、夏に向かう。