センバツ大会が開幕して、私はこの日まで6試合を見た。新基準の金属バットが話題になっている。

それがどんな形でグラウンドに表れるか、そこに興味があった。むろん、外野飛球が伸びなくなったことは、数試合見て実感したが、私の関心は外野手の守備位置にあった。

記者席から見ると、外野手の位置が見やすい。阪神の外野手の踏み跡を目安に、高校野球ではそこから2メートルほど前が定位置と考えてもらえれば、観客の皆さんもわかりやすいだろう。そこを基準に見ると、全体的に前めに守っているケースがかなり増えた。

特に走者二塁では、外野手はかなり浅い。例えば右打者ならば右翼手は芝生の切れ目から7~8メートルほども前に来る。かなりの前進守備だ。ほぼほぼ二塁手の斜め後ろという印象だ。同様に左打者ならば、左翼が極端な前進守備を敷く。

少なくとも近江、敦賀気比がこうした外野の守備陣形をしていた。サヨナラがかかった場面ならば、こうした極端なシフトも考えられるが、試合中盤などでこれだけの守備位置は、新基準のバットが関係しているといえる。

飛ばなくなったことにより、外野手の頭を越す打球が減り、ある程度リスクを取って前めに守るようになった。敦賀気比-明豊の試合でいえば、7回表敦賀気比の攻撃は1死二塁、7番嘉村のヒット性のライナーは中直。これは、守備位置による恩恵だろう。

記者席から見て、明らかに右中間、左中間を破られそうな両翼の守備陣形でも、打球が飛ばない。2死一塁、フルカウントでも、同じだ。間を抜かれたら1点というケースですら、そういう打球が飛ぶ確率は低いと割り切っているのだろう。まだ新基準バットの特質に、打者が対応しきれていない。

特に内野フライの打球の高さが低くなった。これまでは銀傘のひさしの高さ近くまで上がっていたものが、感覚としては20メートルから25メートルほどの内野フライが目につく。金属バットでこれだけ詰まるのを、私はあまり知らない。ここにも新基準バットの現実がある。

ここから、芯で捉えるミート力が問われる時代に入る。常に道具の特質を踏まえ進化してきたのが高校球児と認識している。パワーはもちろん大切だが、より緻密に芯で打つか、そこにフォーカスしたバッティングで、目を見張るような打球を飛ばす光景を早く見たい。(日刊スポーツ評論家)