雨の多かった選抜高校野球大会は30日、準決勝を迎える。初の決勝進出を目指す高崎健康福祉大高崎(群馬)は29日、兵庫・西宮市内での練習を、グラウンドの水抜きから開始。“健大園芸”で心を1つにし、新チームの公式戦で無敗の星稜(石川)にぶつかる。報徳学園(兵庫)は中央学院(千葉)と戦う。

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準決勝開始の22時間前、高崎健康福祉大高崎ナインが泥水と格闘した。前夜の雨の影響で、グラウンドには二遊間の定位置などに大きな水たまりが。20人のメンバーも練習補助の部員も一丸で排水を始めた。

箱山遥人主将(3年)らが泥水いっぱいのバケツを運び、一塁ファウルエリアの排水溝に流す。「もう5、6往復してます」。ちりとりも活用しながら約30分で“健大園芸”を完了。打撃練習が可能なコンディションに回復させた。

青柳博文監督(51)は自チームについて「中学時代の実績でいえば全国屈指のチームなんですよね」と評し「でもいい選手が多いとバラバラになるんですよね、意外と」と添えた。箱山主将もその真理を悟っていた。だから。

「遠回りをしてでも、心を使って、力のある選手が泥くさくという思いを全員に浸透させたくて」

箱山は続ける。「控え部員も遠方から来て寮生活する選手が大半。いろんな感情を持っていると思うので」。全員で作る部活動。心技とも強くなり「日本一を取れるチーム」と自負するまでになった。決勝進出へ快音を響かせるグラウンドの外で「バケツ、洗って返さなきゃ」と蛇口をひねる部員がいた。【金子真仁】