低反発の新基準バットが導入された今大会は「野球の華」と言われる本塁打が激減した。全体の本数は3本で、サクを超えたのは豊川(愛知)のモイセエフ・ニキータ外野手(3年)と神村学園(鹿児島)・正林輝大外野手(3年)の2本。残る1本は大阪桐蔭・境亮陽外野手(3年)のランニング本塁打だった。

金属バットが導入された1975年以降、最少は96年の5本だった。その記録を更新する結果になった。「芯で捉えないと飛ばない」と言われた低反発バット。本塁打激減が直接的な要因かどうかは今後の検証が必要だが、決勝に勝ち進んだ高崎健康福祉大高崎(群馬)と報徳学園(兵庫)ですら本塁打はゼロだった。報徳学園・今朝丸裕喜(3年)や高崎健康福祉大高崎・佐藤龍月(りゅうが=2年)ら好投手の投球の影響も大きいだろうが、甲子園に集う観客の楽しみの1つが激減する結果に終わった。

大会への注目度を示す指標の1つ、観客数も苦戦した。大会の総数は、決勝の3万4200人を含めて32万6900人。17年以降では、動員数に新型コロナ感染拡大を防ぐ上限が設けられた21、22年を除けばワーストの数字に。開幕後、季節が冬に逆戻りしたかのような寒さが続き、グラウンドに雪が舞った日もあった。気候は観客動員に直結するが、全国的に名前を知られた大会のアイコン的な選手の不在、地元の近畿勢の5校が初戦で姿を消したことも響いた可能性はある。