「みちのく勢 センバツマル秘ストーリー」第2回は青森山田の佐藤洸史郎外野手(2年)です。【取材・構成=濱本神威】

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お祝いムードの中で、佐藤洸はただ1人泣いていた。2回戦の広陵(広島)戦では8回に2点、9回に3点を先行されたが、2度追いつき、延長10回に勝ち越す劇的逆転勝利。甲子園を沸かせ、選手らはみな笑顔だった。だが8回裏に代打出場し、その後左翼、右翼の守備についた佐藤洸は、大盛り上がりの試合後控室で壁にもたれ掛かり、目を赤くしていた。「今日は準備不足でやるべきことをできなかった」。守備では、9回表1死一、二塁のピンチで左中間への大きな当たりに追いつけず、勝ち越しを許した。その後2点を追加されて2-5。その裏、チームは5-5と追いつき、なおも9回1死三塁のチャンスで佐藤洸に打席が回ってきた。しかし5球目、内角への直球をスクイズ失敗。飛び出した三塁走者の佐藤隆樹外野手(2年)が挟殺に。好機を逸し、その後は空振り三振と次につなぐこともできなかった。「あそこで自分が決めていたら勝てた。悔しいです」。チームに迷惑をかけた自分がふがいなかった。

次こそは-。その思いで臨んだ準々決勝の中央学院(千葉)戦でも、チャンスを生かせなかった。1-5で迎えた4回裏2死満塁で代打出場。2球目から積極的に振りにいったが右飛に終わった。8回裏2死二、三塁の場面でも打席が回ってきたが、また右翼へ打ち上げてしまった。「何回も自分の打席にチャンスが回ってきて『次こそは』と思ってたんですけど、打てなかった」。前日と同じく、控室ではただ下を向いていた。

「1番」を取り返す。昨秋は不動の1番打者として、公式戦10試合で打率4割2分1厘をマーク。何度もチャンスメークしてきたが、甲子園への遠征出発の2日前に右肩を痛め、今春は佐藤隆にポジションを奪われた。佐藤洸は「まずはけがをしない体作りをする。そして大舞台でのチャンスで、ヒットを打ってチームに貢献できるように頑張っていきたい」。「悔しい」だけで終わった春を糧に、今年の夏は甲子園で笑ってみせる。

◆佐藤洸史郎(さとう・こうしろう)2007年(平19)4月17日生まれ。青森県中泊町出身。小学1年時にNSゴールドスターズで野球を始め、中学では青森山田リトルシニアでプレー。22年夏のリトルシニア日本選手権連覇に貢献した。憧れの選手はヤクルト塩見泰隆。175センチ、69キロ。右投げ右打ち。