東海大静岡翔洋は、県勢初の優勝には届かなかったが、王者に食らいついた。

4点を追いかける5回。相手エースを4回で降ろし、2番手の坂井歩夢投手(3年)から1点を返した。王者を前に無抵抗で終わらなかった。

その秘訣(ひけつ)は、「中村塾」にあった。チームは創部当初から、弓桁義雄監督(60)と20年ほど親交のある元PL学園監督の中村順司氏(77)に打撃指導を受けてきた。2カ月に1度のペースで行われてきた「中村塾」を、今大会前の2月にも4日間にわたって開催。「中村塾」のおかげで決勝の大舞台でも、ひるまなかった。

一矢を報いた5回。リードオフマン1番井戸穂花外野手(3年)が2死から四球で出塁し、盗塁を決めた。続く2番池本愛結内野手(3年)も左安打でチャンスを拡大。なおも2死一、三塁から3番川満芽衣内野手(3年)の三遊間へ抜ける左安打で1点を返した。

しかしその裏に5点を追加され、点差を突き放された。それでも21年の創部から掲げる「笑顔で日本一」を大事にした。8点ビハインドでも、アウトカウントポーズは決まって笑顔。最後まで笑顔を絶やさなかった。

高かった女王の壁。この悔しさとともに得た自信を胸に雪辱の夏へ向かう。【佐瀬百合子】