ドラフト候補として注目された甲子園は、わずか1試合で終わった。花咲徳栄・石塚裕惺内野手(3年)が試合後、心境を問われて悔しさを口にした。

「今日は9人しか試合に出てなくて。新チームが始まってからあまりメンバーが入れ替わらず、今日もそのレギュラー陣だけで試合を終わらせてしまって。打席に立ちたい人もマウンドに上がりたかった人もいっぱいいると思うので。そのチャンスを作ってやれなかったことが一番悔しいです。一緒に練習してきた仲間にすごく申し訳ない気持ちでいっぱいです」

能力は高い。ホームランを狙える力量はある。派手なファインプレーだってできる。志すプロ野球界からは高校生野手ではトップクラスの評価を受け「1位指名の12人に入ってくる」と話すプロ球団幹部もいる。でも石塚は攻守に堅実だ。派手なことに意識を向けない。理由もある。

「自分が我を出して、というか結果を出してもチームが勝てなかったのが秋で。本当に悔しくて。自分が打てなくてもチームが勝てば、そっちの方が気も楽ですし。派手なことより、しっかり落ち着いて場面場面でのプレーをしたいです。まずはチームのために」

千葉・八千代市出身。少年野球チームの「勝田ハニーズ」に原点がある。父の康直さん(49)が監督を務めていた。

「息子だから、というのもあって特にあいさつとか礼儀とか、そういうのはしっかり指導しました。技術うんぬんよりも」

石塚はその父に怒られたことを鮮明に覚えている。

「けっこうワンマンチームだったんです。味方のミスにカッカしちゃう時期があって、それをお父さんにめちゃくちゃ怒られて」

マリーンズジュニアで周りのレベルに圧倒され、己を知り、決してテングにならずここまで来た。だから負けての第一声で仲間への申し訳なさが口をつく。

レギュラー陣だけで最後の試合を終わらせてしまった-。苦しい思いも背負って、プロを志す。「もっと全てにおいてレベルアップして、上の世界で活躍している姿を仲間たちに見てもらいたいなと思います」

2回、甲子園球場をどよめかせた二塁から三塁へのタッチアップ成功は「足が動きました」と、珍しく我を出したシーンだ。それ以外はいつも通り丁寧に堅実に。

実力で抜けていてもお山の大将にならず、最後の試合も仲間を思った。9回表、青空に舞い上がったフライをグラブに収めた。「さぁ行くぞ」とばかりにベンチへ駆けだした時、走路に二塁審判が重なる。塁審に道を譲られると、石塚は丁寧におじぎをしながら前を通り抜けた。試合には負けたが、技も心も「石塚裕惺」を見せた。【金子真仁】