“サクラの広陵”が「金本2世」を4番に据えて出陣する。第82回選抜高校野球大会(3月21日開幕、甲子園)の選考委員会が29日、大阪市で行われ、出場32校が決定。広島からは広陵が3年ぶり22度目の出場を決めた。入部直後から4番を任される丸子達也内野手(1年)は「甲子園で通算10本は打ちたい」と宣言。中井哲之監督(47)が「パワーは当時の金本(OBで現阪神外野手)以上」と認める大砲とともに、広陵が春4度目の優勝を狙う。

 怪物の逆襲がいよいよ始まる。吉報を聞いた丸子は「信じていたが、うれしい」と喜びを噛みしめた。91年4月からの中井監督体制で初めて1年生で夏の4番に座った。甲子園通算24勝(19位タイ)の名将が「けた外れのパワー。当時の金本以上」と認める逸材が甲子園に参上する。

 昨夏県大会は24打数4安打、1本塁打、2打点に終わった。如水館との決勝も2三振し「チャンスをつぶし、甲子園行きを逃した。先輩に申し訳ない」。昨秋の中国大会も不発に終わり“センバツ当確ライン”となる決勝進出を逃した。両大会敗退後の1週間は、悔しさと情けなさで落ち込み、眠れない日々を過ごした。そして、課題の「精神面の強化」に取り組んだ。

 年明けの10日、転機が訪れた。中井監督と親交の深いOBの阪神金本が母校で自主トレを行った。同じ左打者。球界の至宝が黙々とバットを振る姿を、その目に焼き付けた。「すごい。オーラを感じた。自分も金本さんのような威圧感のある打者になりたい」と肝に銘じた。3年夏に初めて4番に座った金本は、1年生で夏の4番に座った存在を中井監督から聞いて「あいつが丸子か」と興味を抱いたという。

 丸子の成長曲線は現在進行形だ。戦艦大和が造られた呉市で生まれ育った。小学6年で身長は170センチを優に超え、バスや電車などの公共交通機関を利用する際には身分証明の提示を求められるほどだった。高校入学後も背は伸び、現在は187センチ、87キロ。中井監督は「彼を4番で使い切る」と断言する。「甲子園では通算10本は打ちたい」と丸子は言う。度肝を抜く“波動砲”を聖地で見せつけ、4度目の春優勝へと導く覚悟だ。【佐藤貴洋】