<高校野球佐賀大会:佐賀西8-2小城>◇9日◇1回戦

 佐賀県屈指の進学校、佐賀西の「秀才エース」重田清一主将(3年)が小城に2失点完投、3年ぶりの初戦突破に貢献した。打者心理の裏をかく“クレバー投法”で12奪三振の力投。昨冬から取り組んできたスタミナづくりも功を奏した。九州では福岡、長崎、熊本、大分、宮崎も開幕。沖縄では甲子園大会で春夏連覇中の興南など8強が出そろった。

 重田清は学年320人中、得意の数学で4番になったこともあるという。開会式直後の初戦に「さすがに緊張した」と振り返ったが、スーパーコンピューターのように、初回から神経は研ぎ澄まされていた。

 丁寧に打者心理を“解析”しながら、球の緩急や内外の出し入れで勝負。直球は130キロ台後半止まりも、武器のスライダーとスローカーブを巧みに操った。球威が落ちた6回に集中打を浴びて2失点したが、圧巻の12奪三振。2失点完投で勝利に貢献し「夏優勝して甲子園に行くことだけを考えている。初戦のプレッシャーがあったが勝ててうれしい」と声を弾ませた。

 進学校ゆえに練習時間は多くても2時間しかないが、それを集中力で補ってきた。同校入学時、野球に集中するため佐賀市内にアパートを借りて祖父母と一緒に1年間暮らした。上達するための努力は苦にならなかった。昨冬から取り組んできた下半身強化メニューのおかげで体重は10キロ増え、スタミナも備わっていた。父音彦(なるひこ)さん(47)は「気が強い」とわが子を評する。

 2年連続初戦敗退の悔しさもバネに変えた。昨年はリリーフ登板も役目を果たせず、一昨年は自身の失策から決勝点を献上。この日の試合後、主将として父母の前であいさつをして涙があふれたのも、3年ぶりの「1勝」の重さをかみしめたから。「先輩たちに迷惑をかけていた分、期待に応えたかった」と話した。

 卒業後は早大か慶大に進学し、東京6大学野球で活躍することが目標。夢をかなえるためにも、まずは目の前の試合に全精力を注ぐ。【菊川光一】