<高校野球大分大会:柳ケ浦5-1大分高専>◇11日◇1回戦

 亡き「恩人」へささげる勝利だ。柳ケ浦が5-1と大分高専を下して2回戦へ進出した。10安打で確実に点を挙げ、投げては左腕リレーで1失点。「入りが硬かったけど、勝てて良かった」と藤久保茂己監督(60)は初戦突破に安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 9日のバス事故で亡くなった重光孝政さん(44)は亜大卒業後7年間、柳ケ浦でコーチとして指導。野球部の寮の寮監もした。藤久保監督は試合前日のミーティングで「彼はうちの歴史をつくった1人」と選手に呼びかけた。開会式の日にバスが横転し部員1人が死亡した2年前の事故を思い出させるからと、極力今回の事故のニュースなどを見せないようにしてきたが、あえて重光さんの話をした。

 選手たちにも思いはある。3年生は2年前、事故に遭ったバスに乗っていたのだ。「バスに乗っていたことを思い出しました」と野木鵬太主将(3年)らナインは、森のバス事故に心が大きく揺れた。選手で集まり「野球に集中して、甲子園に行こう」と話し合った。

 柳ケ浦のバスは事故の後、高速道路の事故現場を1度も通ったことがない。「私も大変だったので苦しさはよくわかる。森にも頑張ってほしい。うちも彼の分まで頑張れればいいと思っています」と藤久保監督。勝利を重ねることが重光さんへの何よりの恩返しになる。【前田泰子】