<高校野球宮城大会:東北8-0志津川>◇13日◇2回戦

 どうしても果たしたい約束がある。東北の選手に届いた19枚の手紙。あの夢舞台で、あの時と同じユニホームを着てもう1度試合をしよう-。500キロ離れた球友の思いに応えるため、東北は汗と泥にまみれてボールを追いかけてきた。

 初戦敗退で終わった今春のセンバツから宮城に戻り、東北は約1週間のボランティア活動に従事した。授業も始まり、夏に向けて練習を本格化し始めた矢先、1つの茶封筒が届く。差出人は大垣日大。震災発生から17日後の3月28日、甲子園で戦った相手だった。

 ベンチ入り18人、記録員1人がしたためた手紙に、阪口慶三監督(67)のメッセージが添えられていた。1人1人が、自分の言葉で思いをつづっていた。パソコンで打ち込んで印刷したものではない。白い便箋に一言一句、鉛筆を走らせたものだった。

 19枚の大半に記されていたフレーズがある。「夏にまた、甲子園で試合をしよう」。小川裕人副将(3年)は言う。「対戦相手から手紙をもらったことなんてないですよ。甲子園に行って良かった。また、あそこで再会したい」。筆圧の強い字でくっきりと書かれた大垣日大の思いは、選手の目に、心にしっかりと焼きついた。

 東北はこの日、今夏初戦を迎え、志津川に勝利した。上村健人主将(3年)は「センバツで支援してくれた人に(甲子園で)自分たちのプレーを見せたい」と誓った。でも、それだけじゃない。真夏の聖地での再会-。甲子園まで、あと5勝。苦しい場面になったら、あの手紙を思い出せばいい。【今井恵太】