<高校野球千葉大会:東京学館浦安8-7流通経大柏>◇25日◇準決勝

 千葉大会でノーシードの東京学館浦安が、流通経大柏にサヨナラ勝ちして初の決勝進出を決めた。168センチ右腕、巣山一歩投手(3年)が、11安打7失点で完投。9回裏無死三塁で、2番磯野大樹内野手(3年)が中前適時打を放った。4回戦の専大松戸に続いてAシード校を撃破し、明日27日の決勝では春の関東大会を制した習志野と対戦する。

 東京学館浦安の168センチ右腕、巣山が粘り強く完投した。風がほとんど吹かなかった酷暑のQVCマリンのマウンドで、9回を145球で投げきった。8回に2失点、9回に1失点と終盤に追い上げられる苦しい展開。タフなエースもさすがに「正直、疲れました。逆転されないでよかったです…」とグッタリした様子だったが、星竜太監督(35)は「実力以上のものを出してくれた。見えない力が働いているのかな」とたたえた。

 東日本大震災で、浦安市内にあるグラウンドから泥水や砂が噴きだした。凸凹になって、外野の一部しか使えなくなった。巣山は制球力を上げるために壁投げを続けていたが、壁そのものも崩れた。ブルペンも使えなくなった。6月下旬まで近くの中学校や近所の公園での練習を余儀なくされ、遠征先で練習場の提供を受けたこともあった。「正直、焦りはありました」。十分な投げ込みができない分、ジャージーを2枚着込んで黙々と走り込んだ。その結果、酷暑に耐えられる体力がついた。

 右横手から5種類の変化球とクイックを織り交ぜて相手を翻弄(ほんろう)する投球が持ち味。自己最速は134キロ。140キロ台の速球を武器とするプロ注目の専大松戸の185センチ上沢、安房の191センチ川名との投げ合いにも勝ってきた。「身長なんて一切気にしないです。気持ちだけでは絶対に負けたくない」と闘争心をあらわにする。その一方で、マウンドでは笑顔を絶やさない。リラックスして投球すると同時に、ピンチの場面でも味方に不安を与えないようにするためだ。

 27日の決勝は集大成を見せるときだ。相手は関東王者の習志野。「震災でつらい思いをしたのに負けられなかった。決勝は、これで最後の試合だと思って投げる」と意気込んだ。