<高校野球京都大会:龍谷大平安9-3立命館宇治>◇25日◇決勝

 古都の怪童がマンモスにやってくる。龍谷大平安が立命館宇治を破り、2年ぶり31度目の夏の甲子園出場を決めた。この日は外野を守った通算25発の2年生4番・高橋大樹は3安打2打点。1年前に退部も考えた主砲が先輩の説得で翻意し、今夏はチームを引っ張った。「(甲子園で)ホームランを1本は打ちたい。3年生のために勝ちたい」。闘志を胸に、来年のドラフト有力候補が夢舞台で大暴れする。

 また高橋が打った。ただし、前日の2発と違って「センター返し」と念じて、打席に立った。4回表2死二、三塁。2-1と1点勝ち越した直後の2球目。ボールゾーンから外角へのカーブをはじき返す。自慢のリストの効いた打球は鋭いゴロで遊撃右を抜けた。「思い通りに打てました。ホームランは考えてなかったんで」。リードを3点に広げた。甲子園を引き寄せる2点適時打を笑顔で振り返った。

 ゲームセットはうれし涙で迎えた。「練習、きつかったなあと思って-」。1年前の苦悩がウソのようだ。伝統ある龍谷大平安の厳しい野球になじめない。現主将の小嶋恭介左翼手(3年)に思わず、こぼした。

 「もうやめます」。

 絶対にやめるな、と止められた。原田英彦監督(51)ら指導者だけでなく、何人もの先輩が引き留めてくれて、今がある。

 2年で高校通算25発のスラッガーの心根は極めて純粋だ。「あの子はまず『楽しいかどうか』です」と母寿子さん(43)。七種競技選手だった母と十種競技選手だった警察官の父正巳さん(46)の息子は8歳のころ、陸上競技を勧められたが「走るのがイヤ」と拒否。じゃあ柔道と剣道を…となったが「痛いからイヤ」。友達とわいわいできるのが楽しくて、結局野球にはまった。

 龍谷大平安には今、学年の垣根がない。08年夏前の部内暴力事件を機に体質改善が進み、1度は学年ごとに解体された寮も今春から1つになった。友達の立場で忠告してくれた先輩が、自分を救ってくれたと感謝している。「ホームランを1本は打ちたい。でも、何より3年生のために勝ちたい。本当にお世話になってますから」。来年のドラフト有力候補は3年生のために、甲子園で猛打を奮うと決めている。【加藤裕一】

 ◆西武銀仁朗(龍谷大平安OB)「おめでとうございます。最近1回戦負けとかが多いと思うので、できれば上まで行ってほしいですね。(高橋については)新聞で見て知ってますよ。会ったことはないですが、頑張ってほしいです」

 ◆龍谷大平安

 1876年(明9)創立の私立校。2008年に現校名。生徒数は1397人(うち女子552人)。野球部は1908年創部、部員数64人。甲子園は春36度、夏31度目。OBは元広島衣笠祥雄氏、西武銀仁朗ら。京都市下京区御器屋町30。安井大悟校長。

 ◆Vへの足跡◆

 

 

 2回戦10-0京都農芸3回戦1-0京都共栄学園4回戦8-1東山準々決勝7-4山城準決勝6-3福知山成美決勝9-3立命館宇治