主砲の気迫がみなぎってきた。明日6日に開幕する第93回全国高校野球選手権に向け、8年ぶりに出場する静岡(静岡)は4日、大阪府内で練習を行った。春の関東王者の習志野(千葉)との初戦が決まり、4番・小川拓真内野手(3年)が「大会1号を打ちたい」と本塁打を熱望。大会初日ではなく、2日目の7日第1試合ではあるが、好投手が並ぶライバルを攻略し、勝利へ導く祝砲を打ち上げる。

 飢えた4番が甲子園での勝利を、そして特大アーチを欲していた。小川は「あぁ、早く試合をやりたい。2日目になりましたけど、待ち遠しい。大会1号を打ちたいですね」。主砲が、高ぶる感情を抑えきれずに、思わずこぼした。初戦の相手が強豪・習志野に決まった組み合わせ抽選会から一夜明けたこの日、わずか2時間の割り当て練習が行われた。練習の終盤にシート打撃が行われたが、聖地での一戦を心待ちにした。

 甲子園での野球が、とにかく楽しかった。3日の抽選会前に行われた30分間の甲子園練習では、ほとんどの時間を守備に費やされた。打撃は残り5分で打席に立っただけ。快音は許されなかった。「緊張よりも楽しめた。試合になったらもっと楽しいと思う」。夢にまで見た光景が現実のものとなったが、充実感には満たされない。自身の役割は打つことだと分かっているからだ。

 県大会では本塁打が見られなかった。それでも打率5割、11安打、7打点のすべてチームトップの“3冠”は、チームバッティングに徹した結果だ。今もその考えは変わらないが、甲子園のグラウンドが柔らかいことを確認すると「ミートを心掛け強く振ることを意識したい。その延長線上にホームランがある。そうなれば最高です」と、アーチのイメージはできあがっている。

 あくまでも、チームのためにバットを振る。だが、強敵打破には、主砲の1発が何よりも一番効く。スタンドに勝利へ導く打球が吸い込まれたとき、小川の心がようやく満たされる。【栗田成芳】