<全国高校野球選手権:高崎健康福祉大高崎7-6今治西>◇6日◇1回戦

 春夏通じて初出場の高崎健康福祉大高崎(群馬)は2点を追う9回に5安打を集中して3点を挙げ、今治西(愛媛)に鮮やかな逆転勝ちを果たした。

 群馬の鉄腕“アトム”が、今夏の甲子園最初のヒーローになった。高崎健康福祉大高崎が2点を返し、同点とした9回2死二塁。エース片貝亜斗夢(3年)の打ち上げた直球が、左翼手と三塁手の間にポトリと落ちた。今治西を下し、89年の佐野日大以来、22年ぶりとなる初出場校の開幕戦勝利を演出した。

 人生初の決勝打に「自分、打撃ホントだめなんで。この夏初めてのヒットです」と目を丸くした。県大会は3打数3三振。公式戦安打は春以来というから、持っている。群馬が生んだ「持ってる男」といえば日本ハム斎藤だが、片貝も小学生の時、電器店の懸賞キャンペーンで乗用車(ホンダ・フィット)を当てたことがある強運の持ち主だ。

 チームメートから「アトム!」と呼ばれるその名は、手塚治虫の漫画「鉄腕アトム」の主人公と同じ。「漫画は読んだことないです」と言うが、正義感の強い子に育つようにと名付けられた。片貝は昨秋までベンチ外の上手投げ左腕。制球をよくするため横手に転向し、春にはエースに上り詰めた。3番手で登板したこの日も3回2/3を無失点で、エースの職務を全うした。

 12日の2回戦では、横浜(神奈川)と対戦する。「いつも試合の流れを作ってくれる(先発の)星野が横浜市出身なんです。2人でエースだから、次も戦えてうれしい」と片貝。甲子園での目標は、勝って校歌を歌うことだった。英語交じりの歌詞には、こうある。「Let’s

 be

 together!」(一緒にいよう)。アトムのように心優しいエースが、チーム一丸となって強豪撃破に挑む。【鎌田良美】