<全国高校野球選手権:作新学院7-6智弁学園>◇18日◇準々決勝

 2年生エースが9回逆転負けに泣いた。16年ぶり4強を目指した智弁学園(奈良)が作新学院(栃木)に惜敗。4回から救援のエース青山大紀は最終回に2点を失い、1点リードを守れなかった。3回戦・横浜(神奈川)戦の9回に劇的な逆転勝利を演じたチームが、準々決勝では9回の悪夢で姿を消した。

 落とし穴は、自分の中にあった。6-5の9回。2年生エース青山がつかまった。3連打で同点とされた。なおも1死二、三塁で5番・内藤に決勝犠飛。うねりのような相手打線の反撃に飲み込まれたエースは、自分を呪っていた。

 青山

 先を見てしまいました。勝てば光星学院とやれると。詰めが甘かった。

 9回に喜び、9回に泣いた。3回戦・横浜(神奈川)戦は3点を追う9回表に8点を奪い、その裏はマウンドで仁王立ち。この日は1点死守を託されながら、果たせなかった。

 青山

 光星には中学時代から知る田村や北条がいて、対戦したかった。1試合1試合と必死に投げていた自分とは差がありました。

 1回から右翼を守った。小坂将商監督(34)が2試合完投の体調に配慮した。だが先発の小野が3回5失点で、4回から救援。試合前は「肩が張っている」と明かしたが、4~8回で1安打しか許さなかった。

 9回の守りの前、捕手の中道は相手に変化を感じていた。「作新はそれまでとは違っていた。迫力がありました」。予兆は8回。小坂監督は先頭山下への四球に舌打ちした。「要注意と思っていた山下君を歩かせたことで、9回が1番から始まる攻撃になってしまった」。連打で無死一、二塁となり、西村を伝令を送った。「硬いぞ。リラックスしろ」。横浜戦同点打のヒーローはバッテリーを励ました。だが勢いを止められなかった。

 青山は「大きく育て」の思いを込め、大紀と名付けられた。ぜんそくで入退院を繰り返し、0歳から水泳を習って体を鍛えた。中学生になっても疲労でじんましんが出た。今夏、大舞台で3試合を戦い抜くエースに成長した。次は、何にも動じない気持ちを育てる。母恵美子さんは「来年もここに連れてきてくれると思います」と期待をまなざしに込めた。2度の9回の攻防を財産に次の春に向かう。【堀まどか】