<高校野球宮城大会:小牛田農林4-2涌谷>◇9日◇1回戦◇名取市民

 小牛田農林が、エース日下雄介投手(3年)の202球2失点の力投で延長14回の死闘を制した。相手は昨夏も初戦(2回戦)で投げ合った涌谷・橋本和樹(3年)。2年連続でエース対決に勝利した。

 試合開始から3時間19分。46人目の打者を三振に打ち取った右腕は、喜びをかみしめた。「こんなに投げたのは初めて。最後の夏なので思い切りいった」。延長14回202球を投げ抜いた。相沢貴裕監督(40)も「日下さまさま。よく頑張った」とたたえた。

 30分間の中断にも集中力を切らさなかった。延長14回、小牛田農林の攻撃で三塁線に飛んだ打球の判定をめぐって試合が止まった。監督の「勝つまで、とことん行くぞ」という指示通り、ブルペンで肩を温める。味方が2点を勝ち越し、その裏の涌谷の攻撃を3人で終わらせた。

 正捕手不在も問題にしなかった。大野稜介(2年)が2週間前に右肩を痛め離脱。直後の練習試合からマスクをかぶった背番号5の佐々木鴻(2年)と試合に臨んだ。再三のピンチをしのいだバッテリーは「完璧でした」と胸を張った。

 投手出身の相沢監督が手塩にかけて育てた。89年夏、仙台三のエースとして宮城大会決勝に進出。仙台育英の大越基(現早鞆高監督)と投げ合った。「あっという間にKOされた」と0-12の完敗。それでも、直球へのこだわりは忘れなかった。背番号6だった日下を投手に転向させた昨年5月、「キレのある真っすぐをしっかり投げろ。変化球が生きないぞ」と徹底させた。この日も積極的に右打者の内角を突き、外の変化球で打ち取った。1年3カ月の特訓の成果だった。

 昨年は4回戦で敗れた。最後の夏は「1つでも多く勝てるように」と静かに言った。ひと回り成長した日下が、こだわりの真っすぐで自分を超える。【鹿野雄太】

 ◆日下雄介(くさか・ゆうすけ)1995年(平7)3月19日生まれ。松山中では投手として活躍。高校入学後は遊撃手となったが、昨春の初登板を機に投手転向。夏は背番号6で3試合に先発し4回戦進出。昨秋から背番号1。打順は主に3番。右投げ右打ち。170センチ、68キロ。