<高校野球宮城大会:仙台商5-1泉松陵>◇15日◇3回戦◇名取市民

 「双子対決」は弟に軍配が上がった。米兄弟の弟・将吾投手を擁する仙台商が、兄恭汰遊撃手(ともに3年)のいる泉松陵に5-1で勝利。将吾が右翼手で出場したため投手対打者の直接対決はなかったが、兄弟をつなぐ打球がお互いの守備位置に飛んだ。

 仙台商の弟将吾、泉松陵の兄恭汰。高校最後の対決は弟が制した。試合終了後に整列した際、兄は弟を探した。「握手をしようと思ったんですけど、距離があったのでできなかった」。グラウンドでは涙をこらえ、毅然(きぜん)とした態度で勝者をたたえた。

 普段から「仲はいい」(恭汰)という2人。その言葉がウソではないことは、プレーを見れば明らかだった。将吾は3回裏、4回裏と2打席連続で内野フライを打ち上げた。どちらも捕球したのは遊撃手の兄。恭汰も5回表、強引に引っ張って右翼線へ打球を運んだ。弟のジャッグルもあり、二塁打となった。「それはたまたま」と口をそろえるが、偶然でなくは双子ならではの必然のようだった。

 直接対決を望み、あえて別々の高校に進学。この3年間、公式戦では3度対峙(たいじ)した。「まるで引きよせられたようだった」(恭汰)。初対決は1年秋。将吾は、代打で出てきた兄を投ゴロに打ち取った。2度目の今春。兄を2回打席に迎え、三振、四球という結果だった。

 「今度こそ勝ちたい」。恭汰には並々ならぬ思いがあった。決戦前夜。兄は「明日は勝つからな」と挑戦状をたたきつけた。弟は「負けねえから」。この日は投手と打者で勝負する瞬間は訪れなかった。勝利を得たのは仙台商の将吾。夏が終わった恭汰は「『勝ってこいよ』と伝えたい」と甲子園出場を弟に託した。「兄の分まで戦いたい」。将吾は2人の夢を確かに引き受けた。【湯浅知彦】