<高校野球宮城大会:東北4-3利府>◇22日◇準決勝◇クリネックススタジアム宮城

 東北は大会前、ベンチ外の選手による壮行試合を見た主力が発奮し、ノーシードから王手をかけた。

 強い東北が帰ってきた。4-2の9回、2死満塁から押し出し四球で1点差に迫られた。なおも逆転のピンチ。全員で声を掛け合い、最後の打者を遊ゴロに打ち取った。3年ぶりの決勝進出に五十嵐征彦監督(36)は「最後までよく戦った」。苦しみ続けた選手たちは、拳を突き上げて喜びを爆発させた。

 屈辱の連続だった。昨秋、43年ぶりに地区予選で敗退。春の県大会も2回戦で敗れ、2度もどん底まで落ちた。周囲から批判も受けた。先制打を含む2安打の酒井翔弥外野手(3年)は「名門(の歴史)に泥を塗った」と振り返る。「夏に勝って見返そう」と意気込んでいた6月30日、練習試合で左膝半月板を痛め離脱。16日の3回戦で復帰したが、痛みが再発し2試合欠場した。この日は志願のスタメン復帰で「迷惑を掛けたので、打てて良かった」。テープを何重にも巻き、勝利のために走り続けた。

 6月下旬、決勝の相手・仙台育英に“前哨戦”で圧勝した。メンバーを外れた3年生同士による壮行試合で10-0。斎藤圭吾主将(3年)は同級生の戦いに「感動した。(決勝で)つらい時は思い出したい」。五十嵐監督も「あれでレギュラーは奮い立ったんじゃないか。失うものはない」。宿命のライバルを倒し、完全復活を告げる。【鹿野雄太】