<全国高校野球選手権:光星学院9-4神村学園>◇18日◇3回戦

 プレーボール弾が打線に火を付けた。光星学院(青森)が、1回表の天久翔斗右翼手(3年)の初球先頭打者本塁打から13安打9得点。神村学園(鹿児島)を破り、3季連続の8強進出を決めた。天久は主力として4度目の甲子園で初アーチ。不動のリードオフマンが勝利に導いた。

 試合開始を告げるサイレンと歓声を聞きながら、天久はダイヤモンドを1周した。1回表の初球。「こすったので、レフトフライかと思った」という打球が伸びていき、左翼ポール際に吸い込まれた。08年の東邦・山田祐輔捕手(当時3年)以来、4人目のプレーボール弾。昨春のセンバツから4度目の甲子園で初の1発に「打ちたかったのでうれしかった」。それでも「グラウンド内では、はしゃぎたくないので」とガッツポーズは封印し、ゆっくり走りながら、喜びをかみしめた。

 初球から振ると決めていた。試合前、仲井宗基監督(42)と田村龍弘主将(3年)から同じ言葉をかけられていた。「真っすぐは最初から狙え」。助言通りに、真ん中高めの140キロ直球をフルスイング。切り込み隊長が打線を目覚めさせ、4番北條史也遊撃手(3年)も2ラン。これで主導権をつかんだ。

 バットを変えた効果があった。遊学館(石川)との初戦は5打数1安打。1番打者の役割が果たせず「悩んでいないふりをしてたけど、苦しかった」という。すると翌日、宿舎で同部屋の田村が言った。「バット、変えろや」。使っていたものより軽いタイプをケースから取り出し、グリップを巻き直した。1日400回振り込み、前日練習で快音を連発した。そしてこの日、実戦初スイングで本塁打を放ち、5打数3安打。「田村のおかげかな」と笑った。天久の1発に刺激を受けた田村も、3回に貫禄の2ランを左中間に打ち込んだ。

 打撃だけでなく、守備でも貢献した。7回無死一塁で、右翼後方への大飛球を下がりながらキャッチ。小学生時に100メートル県NO・1に2度輝いた俊足で、素早く落下点に入った。出身は沖縄・石垣島。幼少期はサトウキビ畑を走り回り、海に潜ってイーグン(沖縄の方言でモリ)で魚を捕って遊んでいたという。南国の大自然に育てられた高い身体能力が、攻守でチームを引っ張っている。

 これで3季連続の8強入り。準々決勝の対戦カードは今日19日に決まる。天久は「みんな状態が上がってきた。自分も自信がついた」。悲願の優勝へ向け、欠かせないリードオフマンが、大きな手応えをつかんだ。【鹿野雄太】