<全国高校野球選手権:光星学院3-0桐光学園>◇20日◇準々決勝

 地元八戸出身のエースが、ドクターK・松井裕樹(2年)に投げ勝った。光星学院(青森)の金沢湧紀投手(3年)が、3安打9奪三振で甲子園初完封。桐光学園(神奈川)に勝ち、3季連続の4強入りを決めた。4回には、松井に負けじと3者連続三振を奪うなど圧巻の投球。度重なるケガと不振に苦しんだ右腕が、最後の夏に復活を果たした。明日22日の準決勝は、作新学院(栃木)と東海大甲府(山梨)の勝者と対戦する。

 金沢がマウンドでほえた。103球目、最後の打者を空振り三振に仕留めガッツポーズ。「絶対に負けたくなかった。今までで最高のピッチングです」。3戦53Kで注目を浴びる松井との投手戦を制し、甲子園初完封。「守備にも助けられて、やっと最後まで投げられた」と笑顔がはじけた。暑さの中での投げ合いに備え、前日も40分間の走り込み。疲労を隠せない相手左腕とは対照的に、金沢の表情は最後まで変わらなかった。

 松井の武器がスライダーなら、金沢には必殺のカーブがある。桑田真澄氏(元巨人)の握りを手本に、中学時代に習得。高校で磨きをかけた。打者の手前でブレーキがかかって落ちていく球に、次々とバットが空を切る。4回には「攻め方を変えた」と縦のスライダーで3者連続三振。そのまま最後まで狙いを絞らせず、わずか3安打に抑えた。「ワンバウンドでも田村が止めてくれる」。信じて思い切り腕を振り続けた。

 どん底から、はい上がってきた。センバツ後に左足甲の疲労骨折が判明。さらに右肩を2度痛めた。「投げないと4日で忘れる」というフォームが崩れ、登板機会のない試合が続く。青森大会も4試合計21回で11四死球4失点と不調に終わった。「甲子園のマウンドに立てるのか」という不安の中、7月下旬から金沢成奉総監督(45)とフォーム修正に取り組んだ。最後の望みだった。

 成果は大阪入り後に表れた。7日のシート打撃登板後、右足親指の皮がむけ、血が出ていた。負傷ではなく、しっかりと体重移動ができている証拠だ。明治神宮大会優勝に貢献した昨秋以来。調子の上がらなかったセンバツでは1度も感じなかった痛みが、うれしかった。投球を見た総監督にも「化けたな」と珍しくほめられ、手応えをつかむ。18日の3回戦では親指の付け根に血まめもできた。この日は、つぶれた状態で力投。「我慢した。今も痛いです」という表情は笑顔だった。

 地元八戸出身のエースが復活し、頂点まであと2つ。15時間かけて応援に駆けつけた父秀秋さん(44)も「頼もしかった。この調子で(優勝まで)行ってほしい」と願った。「地元に、今度こそ優勝旗を持って帰りたい」。大きな自信を得た右腕が、悲願達成に導く。【鹿野雄太】