第85回選抜高校野球(22日開幕)に出場する聖光学院(福島)が18日、大阪・高槻市で金光大阪と練習試合を行い、延長11回の末に10-9でサヨナラ勝ちした。4番園部聡内野手(3年)が、3ラン2本を含む3安打6打点と爆発。足をあまり上げない新フォームで、いずれも左中間最深部に放り込んだ。プロも注目する右の主砲が、本番に向けてギアを上げてきた。

 一振りで、グラウンドの雰囲気を変えた。1回無死一、三塁。外よりの真っすぐをとらえた園部の打球が、低い弾道で湿った空気を切り裂く。白球はグングン伸びて、左中間のネットを越えた。中堅手はぼうぜん。超激戦区大阪の強豪校の控え部員は「エグすぎるやろぉ…」と目を見開き、父母たちも圧巻の弾道に色めき立った。15日の大阪入り後、初の実戦。プロ注目のスラッガーが、ファーストスイングでいきなり結果を出した。

 勢いは止まらない。5回無死一、二塁の好機では、外角のスライダーを再び左中間最深部へ運んだ。「1本目はすくってしまったけど、ボールがうまくバットに乗った。2本目はうまく反応できた」。視察した楽天の愛敬スカウトは「弾道が良い。ホームランアーチストだね。森より長打力はある」と、大会NO・1打者の呼び声高い大阪桐蔭・森友哉捕手(3年)を引き合いに出し、絶賛した。

 鍛え上げたリストが、飛距離を生んでいる。マリナーズ岩隈ら、多くのプロを担当してきた大高茂トレーナーから「良い打者は前腕が太い」と助言され、冬場に徹底強化。バーベルを持って手首を上げ下げし、アンダーシャツの前腕部が「秋よりきつい」と言うほどたくましくなった。外角球も手首で力強く押し込めるから、右に軽打せず左中間に強い打球を打てる。

 8日の対外試合解禁から9試合で4本と量産し、高校通算本塁打は42本となった。今月の沖縄遠征ではタイミングの取り方にズレがあったが「足を上げない感覚」の新フォームで好感触を得ている。昨夏の甲子園でも本塁打を放っており「今年も打ちたい」。希少な右の長距離砲が火を噴けば、勝利もおのずとついてくるはずだ。【今井恵太】