<高校野球静岡大会:富士市立7-3静清>◇23日◇3回戦◇富士球場

 第5シードの富士市立が、3番鈴木悠矢内野手(2年)のサヨナラ満塁本塁打で伝統校の静清を振り切った。1点ビハインドの9回裏、3連打で満塁とすると、田原仁太内野手(2年)の内野ゴロを、相手遊撃手が本塁送球をそらしてまず同点。なおも満塁で、鈴木が初球フルスイングすると、打球は右翼スタンドに吸い込まれた。伝統校が相手とはいえ、シードの意地を見せた一打だった。16強が出そろい、今日24日に4回戦が行われる。

 鈴木は最終回、戸栗和秀監督(48)から「きっと満塁でお前に回ってくるから」と予言された。鈴木もこのまま終わるわけにはいかなかった。7回、自身の送球ミスをきっかけに逆転を許したからだ。1死から必死に仲間がつなぎ同点に追いつく。予言通り満塁で打席が回ってきた。

 戸栗監督から「当たってでもつなげ!」とのゲキが飛ぶ。「イケイケムードだったし、球種もコースも関係なく初球から振ろうと思っていた」。鈴木が強い意志で振り抜いた打球は、右翼スタンドに吸い込まれた。「ミスを取り返したかった。外野の頭は抜けたと思ったけどまさか入るとは…。サヨナラ満塁ホームランは人生初です」。

 相手は甲子園出場の伝統校だ。小刻みな継投で最後は1、2回戦で好救援の高谷辰徳投手(2年)が登板。戸栗監督は「相手の勝ちパターンで嫌だったが、簡単にはアウトにならないのがうちの野球」。あきらめずにつなぎ、劇的勝利を呼び込んだ。

 前日22日、戸栗監督は、1勝して気が緩んだレギュラー陣に活を入れた。川島晃平捕手(3年)は「寮で気が抜けてダラダラしていて、怒られました。生活の気の緩みがそのままプレーに出る。気合を入れ直して臨んだ。シード校として、ノーシードの相手に名前負けするわけにはいかないから」。川島は8回表に相手の盗塁を刺し流れを引き戻し、9回裏は逆転劇の起点になった。戸栗監督は「選手と触れ合って怒って、また接して…。うるせー、厳しいと思われてるでしょう。でも、ちょっと報われたかな」と笑顔を浮かべた。【岩田千代巳】