<高校野球静岡大会:常葉学園菊川1-0菊川南陵>◇29日◇決勝◇草薙球場

 今春センバツ16強の常葉学園菊川が、菊川南陵にサヨナラ勝ちし、5年ぶり4度目の出場を決めた。センバツ後、練習に臨む姿勢に物足りなさがあった2年生をベンチ入りメンバーからすべて外す“ショック療法”でチームの結束力が増した。「ノーバント野球」で07年センバツを制した実力校が、春以降の公式戦(県大会、東海大会)で無敗のまま甲子園に戻ってくる。

 常葉学園菊川がフルスイング軍団らしい攻撃で雨中の決戦にピリオドを打った。下馬評は有利だったが、9三振を喫するなど8回まで無得点。9回1死から主将の4番松木大輔捕手(3年)が右前打で出塁。5番大西優輝内野手(3年)はバントの構えすらしない。松木が二盗し、最後は大西が左翼越えの一打。苦しんだ試合を制し、歓喜の輪ができた。

 3度目となる春夏連続出場。静岡勢で春夏連続の甲子園出場は戦後11度目となるが、春季東海大会も制したのは今年の同校だけ。さらに、春と夏の県大会を制したのは史上3校目(65年東海大一と97年浜松工)。優勝候補に恥じぬ結果だが、森下知幸監督(52)は「信じられない」と言葉を選んだ。道のりは決して順調ではなかったからだ。

 センバツ後の春季県大会は、3年生だけで臨んだ。2年生は練習から覇気がなく、仲間を手伝うこともなかったためだ。戦力ダウンは覚悟の上で、夏への奮起を促す意味も込めて選んだ道。それでも東海大会も制覇。3年生の一体感が、思わぬ快進撃を生んだ。

 センバツで大会第1号本塁打を放った桑原樹内野手(2年)は、その様子をスタンドから眺めていた。「僕らが戻れる雰囲気じゃない」(桑原)と尻込みさえもした。中途半端な気持ちで戻れば先輩に迷惑をかける。でも気持ちを入れ替えるしかなかった。練習から周囲に目を配るなど、態度を改めた。東海大会後から戦列に復帰。今大会では、準決勝で先制2ランを放つなど貢献した。同じくセンバツでレギュラーだった前川直哉外野手(2年)もチームトップの打率4割1分2厘を残した。森下監督の“荒療治”が最高の形で着地した。

 春から個の力を増し、チーム力もよりアップして臨む。指揮官は「状態を良くすることを中心にやっていく」と上積みを強調した。ヤンキース似のピンストライプのユニホームがトレードマーク。県勢としては1926年(大15)の静岡中以来、87年ぶりとなる夏の日本一を目指す。【石原正二郎】

 ◆常葉学園菊川

 1972年(昭47)創立の私立校。野球部は83年に創部。生徒数は941人(女子581人)。部員数78人。甲子園出場は春4度、夏は4度目。07年センバツで優勝、08年夏は準優勝。主なOBはソフトバンクの門奈哲寛打撃投手兼通訳、DeNA田中健二朗。所在地は静岡県菊川市半済1550。土屋義人校長。◆Vへの足跡◆

 

 

 2回戦3-2伊東商3回戦4-1清水桜が丘4回戦14-2富士宮東準々決勝3-0三島準決勝8-2東海大翔洋決勝1-0菊川南陵