<全国高校野球選手権:常葉学園菊川5-3有田工>◇14日◇2回戦

 常葉学園菊川(静岡)が有田工(佐賀)を破り、3年連続で初戦敗退していた県勢の不名誉な記録を止めた。エース堀田竜也(3年)が、6安打1奪三振無四死球3失点で甲子園初完投。95球の省エネ投法で守備からリズムを生み出し、5得点を呼び込むなど、2季連続の16強入りに貢献した。次戦は17日の第3試合となり、対戦相手は今日15日に決まる。

 常葉菊川・堀田が甲子園のマウンドでスイスイと投げ続けた。5-3で迎えた5回から変化球を低めに集め、8回まで3者凡退を続ける。9回2死までわずか84球。試合前に主将の松木大輔捕手(3年)と話し合い、目指した90球以内の完投が見えてきた。続く打者に内野安打を許したものの、最後は遊ゴロに打ち取った。球数は目標を5球オーバー。それでも、1時間40分で試合を終わらせた。堀田は「そんなに暑くなかったのも良かった。勝ててうれしい」と屈託のない笑顔を見せた。

 1回戦で自己最速の148キロを計測した有田工・古川侑利投手(3年)との投げ合い。この日も最速144キロを連発した古川に対し、堀田は前日13日の宣言通りに120キロ台中心で勝負した。それでも、序盤は制球が乱れ3回に1失点。6番桑原樹内野手(2年)の2ランで5-1となった直後の4回にも、古川に中越えの三塁打を浴びるなど2失点した。「あれはやばかった」と一時はくじけかけた。

 踏ん張れたのは、仲間がいたからだ。「あのピッチャーから5点取ってくれた」。松木の配球にも支えられリズムをつかむと、バックも無失策で援護。森下知幸監督(52)は「持ち味を生かしてよく投げた」と、初戦を託した理由であるテンポの良さに笑みをもらした。不利とされる49代表校最後の登場で勝利に導いたのは、まさにエースとしての証明だった。

 その分、ご褒美をもらった。試合後に榊原隆登内野手(3年)がウイニングボールを持っていた。欲しいかどうか尋ねられると、即座に受け取った。「だって欲しいんですもん」。堀田は東海大会優勝時に続く2個目の記念球を大事そうにポケットにしまった。次戦は中2日で迎える。「今日の後半のような投球をしたい」。堀田が生み出す常葉菊川のリズムは、まだまだ止まらない。【石原正二郎】