<全国高校野球選手権:弘前学院聖愛4-3沖縄尚学>◇16日◇2回戦

 弘前学院聖愛が青森県勢で初めて夏の甲子園初出場2勝を挙げた。沖縄尚学に先制されながら逆転して逃げ切った。エース小野憲生(3年)が5安打3失点で1回戦の玉野光南(岡山)完封に続く完投勝利。徹底したイメージトレーニングと強豪校との練習試合で培った「おじょまない(津軽弁でおじけない)」投球を、ナインが攻守でもり立てた。ベスト16に勝ち上がり、明日18日の3回戦で延岡学園(宮崎)と対戦する。

 全員津軽生まれの聖愛の「りんごっ子」が2勝目を挙げた。1回表に先制されてもその裏、藤元蓮内野手(2年)一戸将内野手(3年)の連打で同点。4回に外川和史外野手(2年)の勝ち越し打、一戸の2本目の適時打で4-1とリードを奪った。7、8回に1点ずつ返されて1点差。だが、落ち着き払ったプレーで9回を守り切った。接戦を制した原田一範監督(35)は「苦しい中でもよく戦った。頼もしいです」とナインをたたえた。

 右横手投げのエース小野には余裕があった。「今日は調子は悪かった」と、1回に抜けたカーブを狙われた。それでも笑顔を絶やさない。肘が下がり気味だったのを修正し、2回から5イニングを無安打。7回にソロアーチを浴びても動じない。「みんなに『楽しくやろう』と言われ肩が下がった(力が抜けた)」。8回もピンチでも腹式呼吸で自らを落ち着かせ後続を断った。連続完投に「最高です」と笑顔がはじけた。

 徹底したイメージトレーニングが生きた。1回から9回を優勢、接戦、劣勢の3つの展開で頭に思い浮かべる。試合前に必ず行う「タイムライン」という儀式をこの日の試合前も行った。小野は「イメージした通りだった」。ピンチも想定内。頭に残っていた勝利のイメージが余裕につながった。

 バックもエースをもり立てた。8回に1点差に詰め寄られた後、1死一塁から併殺を完成させた。沖縄尚学応援席からの大声援も「盛り上がっているのは(自分たちへの)応援だと思っていた」と小野。4万4000観衆も味方につけるしたたかさもあった。

 初出場での快進撃。強豪校との対戦が堂々としたプレーにつながっている。原田監督が奔走して昨秋以降、横浜、慶応、東海大相模(神奈川)、早実(東京)、福知山成美(京都)など全国的な名門、強豪校の胸を借りてきた。

 今年3月にはチーム初の沖縄遠征も行い、13試合を戦った。沖縄の野球も肌で感じていた。「おじょまなくなった」と原田監督。主将の一戸も「相手にかき回されることなくできた」。センバツを2度制している難敵相手にもひるむことはなかった。

 明日18日にはベスト8をかけて延岡学園と戦う。「弘前も盛り上がっているだろうし、笑顔のプレーで応援してくれる人に恩返ししていきたい」と小野。津軽の熱い夏はまだ終わらない。【高場泉穂】

 ◆小野憲生(おの・けんせい)1995年(平7)4月20日、青森県つがる市生まれ。小3年から野球を始め、森田中まで主に捕手。高1の夏の打撃投手を務め好投したことで捕手から投手に転向した。1年秋からレギュラー入り。家族は両親、弟、妹。182センチ、72キロ。右投げ右打ち。