<高校野球埼玉大会:城西大川越9-5川越初雁>◇10日◇1回戦◇川越初雁公園

 不思議な巡り合わせがあるものだ。城西大川越の7番小川大輝内野手(3年)が1回、3点を奪って逆転し、なお2死三塁で、左越えに2ランを放った。初回5点のビッグイニングで、川越初雁の戦意を奪った。小川は「甘い球がきたので思い切り振った。スタンドに入るとは思わなかった。びっくりしたけどうれしかった」と笑った。

 埼玉の今夏第1号。記録はそれだけにとどまらなかった。昨夏は同校の1学年先輩の山村泰駿さんが、同じ地元の川越初雁公園野球場で大会1号をマーク。しかも開幕翌日の2日目という偶然も一緒。県高野連の記録には残っていないが、城西大川越が2年連続第1号という珍記録ホルダーとなった。

 連続1号の立役者は本塁打とは無縁の男だった。小川は今春の練習試合でランニング本塁打を打った経験はあったが、柵越えは初めて。左翼フェンスまでは91メートルだが、台風とは関係なく95メートルは飛んでいた。同校OBでもある塩沢力監督(54)は「まさかだよね」と喜んだ。

 夏1勝は学校応援のたまものといってよい。阿部尚武校長の英断で、この日は授業開始時間を4時間遅らせた。「野球部の応援に行きたい生徒は行って来なさい」ということだった。ナインも意気に感じ、初戦突破という結果で応えた。

 城西大川越の夏最高成績は77年の8強だが、最近は2回戦の壁を突破できていない。夏のヒーローに躍り出た小川に期待がかかるが、「センター返しを心がけ、あくまでつなぎのバッティングに徹します」と冷静だった。【浅見晶久】