<高校野球兵庫大会:滝川4-3葺合>◇13日◇2回戦◇明石トーカロ

 まるでマー君の右腕が、右肘痛に耐えて快投した。滝川(兵庫)北間匠投手(3年)が9回から登板し、葺合(ふきあい)に勝利した。3月に「右肘靱帯(じんたい)の部分断裂」と診断され、大会後の手術を検討。50球に球数制限して臨む夏で、3者凡退に抑えた。

 ヤンキース田中に憧れる「キタマー君」こと北間は、4-3でリードする9回に登板した。打者3人を6球で抑えた。「3人で抑えられてきっちり自分の仕事が出来た」と安心した表情。不老伊知郎監督(55)も「北間は安心して見てられる。彼にとって最後の大会だし、私も思いに応えてあげたい」と胸の内を明かした。

 絶望的なケガに襲われた。3月に右肘に違和感を覚え、精密検査を受けた。診断は「右肘靱帯の部分断裂」。医師にはトミー・ジョン手術と呼ばれる、損傷した肘の靱帯を切除し他の部位から正常なけんを移植する手術を勧められた。「手術しないと投げられないかもしれない。でも、手術を受けたら夏の大会に間に合わない」。日常生活に支障はなかったが、野球人生を思うと葛藤があった。

 不老監督は「9回、お前に任せるよ」とストッパーとして短いイニングでの起用を告げた。「そのとき、頑張ろうと思った」。1日の球数は50球と制限。練習で投げ込みはほとんど行わず、ゲームは常にぶっつけ本番。「そこ(試合)だけに集中して、チームのために9回を抑える僕の仕事をする」。北間に迷いはなかった。

 兵庫大会が開幕して1週間。ヤンキース田中のDL入りのニュースが飛び込んだ。くしくも北間と同じ病名で、田中の選択も手術回避だった。「田中投手は憧れ。(手術を受けず)リハビリのニュースを聞いて、励みになった」。田中に勇気をもらった北間には、目の前の兵庫大会しか見えていない。最後の夏で強さを見せる。【小杉舞】

 ◆北間匠(きたま・たくみ)1996年(平8)4月18日、伊丹市生まれ。金楽寺小4年から「金楽寺少年野球クラブ」で外野手として野球を始める。成良中では「伊丹シニア」に所属し、中1から投手。滝川では、1年秋からベンチ入り。50メートル走6秒3。175センチ、76キロ。右投げ右打ち。