<高校野球宮城大会:塩釜4-2仙台商>◇4回戦◇16日◇コボスタ宮城

 宮城の第4シード塩釜が仙台商を下し、80年以来34年ぶりに8強入りした。5回裏に2点を勝ち越し。直後の6回表の守備、2死満塁のピンチでサインプレーからけん制で一塁走者を刺して勝利を呼び込んだ。

 ピンチになって、塩釜は秘策を狙っていた。6回表の2死満塁での守備。一塁手の千葉文月(2年)はベースを離れて、走者の背後に位置した。右のエース宮井大治(3年)は、一塁に背中を向けている。捕手の阿部裕太朗(3年)から出たのはけん制のサイン。ワンテンポ置いて、千葉が一塁ベースへ駆け込む。宮井もピタリと呼吸を合わせ、体を反転させるように送球し、鮮やかに一塁走者を刺した。

 「満塁でけん制はない」という一塁走者の心理の裏をかいた。「春の県大会前からずっと練習してきたんです。昨日も練習で確認しました」と千葉は胸を張った。5回裏に4番千葉と5番阿部の連打で2点を勝ち越した直後のピンチを断った。悪送球を恐れなかった宮井も「いつでもできるように準備していた。自信もあった」と誇らしげ。流れに乗って宮井は7回以降、仙台商を無安打に抑えた。勝敗を分けたサインプレーだった。

 塩釜にスター選手はいない。長打力も強豪校に比べれば劣る。単打でつなぎ、今大会3試合連続無失策の堅守や粘りが身上。初の春4強におごることなく、夏に勝ち上がる秘策として、けん制サインプレーは練習試合で何度か試したという。佐藤純二監督(39)は「本番で、よく落ち着いてやってくれた」と目を細める。仙台商の下原俊介監督(43)も「6回の満塁がすべてでした」と脱帽した。

 仙台育英、東陵などの有力校が相次いで敗退。その中でシード校の塩釜は、守備のビッグプレーで34年ぶりのベスト8をつかんだ。【久野朗】

 ◆塩釜の8強

 34年ぶり11度目。前回の80年には準決勝まで進んだ。ベスト4は3度あるが、その年を最後に途絶えている。決勝進出は戦後間もない49年に1度あり、東北に敗れた。