春日部共栄(埼玉)が、秀才エース金子大地投手(3年)を中心に、開幕戦で金星を狙う。甲子園生誕90周年に開催される第96回全国高校野球選手権大会は台風の影響で11日に順延された。8日は開会式リハーサルが行われ、第1日第1試合で春夏連続優勝を狙う龍谷大平安(京都)と対戦する春日部共栄は、兵庫・西宮市で最終調整を行った。

 総仕上げの練習に、春日部共栄の左腕エース金子の「らしさ」も全開だ。ブルペンで打者を立たせ、カウントを設定。さらに一塁走者がいる想定で、けん制の細かな動きも入れたクイックで投げ続けた。

 開幕戦の相手、センバツ王者の龍谷大平安は機動力が武器だ。しかし春日部共栄には金子の頭脳がある。「けん制のふりをして本塁に投げるのが得意です。走者の動きを見れば、走るかどうか何となく分かります」。刺す以前に、走らせない。守屋元気捕手(3年)の強肩との共同作業で、この1年で許した盗塁はわずか2つだという。

 金子の工夫には本多利治監督(56)も「センスがいい。頭がいい」と舌を巻き「入試では学年2番の得点だったからね」と明かした。今も選抜クラスで授業を受ける左腕は、中学時代はオーバースローだったが、「半年間の受験勉強が終わったらいつの間にか横投げになっていた」というほど。猛勉強の副産物となったスリークオーターで、夢の甲子園にやって来た。

 秀才左腕はしかし、ただの技巧派ではない。この日もブルペンで内角を攻め続け、しまいには打席に立つチームメートに当てた。「あれが持ち味。申し訳ないけれど、当てたことは全く気にしていません。平安にも強気に攻めるだけです」とひるまない。打たせない、走らせない。大観衆の開幕戦、冷静に頭脳をフル回転させて1勝を。それは、本多監督の甲子園通算10勝目でもある。【金子真仁】