第96回全国高校野球選手権の山形代表・山形中央の武田和也(3年)は異例のコーチ専任でチームを支える。三塁手としてレギュラーには届かなかったため、昨秋の新チーム発足時に庄司秀幸監督(38)に直訴。選手への未練を断ち切り、チーム内では「学生コーチ」と呼ばれている。

 練習ではスパイクも履かず、キャッチボールもしない。庄司監督の指示を選手に伝え、ノックバットを握り、打撃投手を務めることもある。「裏方ではない。チームをつくる選手のリーダー。日本一になるためにやってきた」と甲子園に胸を躍らせる。昨秋の県大会からベンチ入りし、試合では監督の“参謀役”として、出された指示をベンチで選手に再確認させる。

 公式戦出場はないが「選手が成長してくれるのがうれしい」と目線はあくまで指導者。練習で声が出なかった選手が翌日に声を出すようになるなど、武田の指導で野球への姿勢が変わった例もあるという。庄司監督は「試合に出るだけが高校野球ではない。ベンチワークで必要」と甲子園でもベンチに入れる。レギュラーに一番近い背番号10も信頼の証しだ。武田は「人を助けるのが魅力」と、将来は救急救命士を希望する。陰でチームを支える専任コーチらしい。【久野朗】

 ◆武田和也(たけだ・かずなり)1996年(平8)6月12日、山形県東根市生まれ。神町小3年の時、神町ニューリッチベースボールクラブで野球を始め、投手、三塁手。神町中の軟式野球部を経て山形中央に進学。171センチ、68キロ。右投げ右打ち。家族は両親、祖母と弟。