<センバツ高校野球:大垣日大6-2大阪桐蔭>◇30日◇2回戦

 葛西(かっさい)に喝采だ。大垣日大(岐阜)が大阪桐蔭(大阪)に快勝し、初出場で準優勝した07年以来の8強入りとなった。2年生エースの葛西侑也(ゆきや)が2失点完投すれば打線も2発で援護。県勢春通算60勝目を挙げた。

 葛西が左手で力強いガッツポーズをつくった。大阪桐蔭を抑えた左腕で勝利の儀式だ。2年生、16歳のエースは「0点で抑えようという気持ちはなくて、点を取られてもいいから低めに投げて打たせて取ろうと思った」。5回には自己最速を3キロ更新する136キロも出した。終盤2失点したが、要所では変化球を低めに散らして8安打完投だ。

 強力打線が相手でも追い詰められた感じはなかった。チームのモットーでもある「笑顔」でリズムに乗る。初戦に続き、球場入りするバスで恒例のカラオケ大会が行われた。歌に自信がない葛西は「みんなにウケるんで『アジアの純真』(PUFFY)です」。どう歌っても音程が外れてしまう曲を選んで、狙い通り和ませた。

 ベンチも笑いに満ちていた。2、6回の攻撃前、円陣でベテラン阪口監督が突然「カッチカチやで!」と、お笑いコンビ・ザブングルの加藤から勝手に拝借して、語尾をアレンジしたお気に入りギャグをかました。

 この一発ギャグは新チーム結成後、試合中のお約束だったが、封印された川島(徳島)との初戦は大苦戦。葛西が「何でも前向きでボクにとってはお父さんと同じような、頼れる存在」と話す65歳ベテラン監督の“必殺技”に選手も即座に反応し、その2、6回に得点を挙げた。結局、女房役の時本の2ラン、6番安藤のソロなどで計6得点。果敢な走塁も交えて相手を寄せ付けなかった。

 盤石の試合運びに手応えを感じ取った阪口監督は「課題はない。100点満点」と手放しの褒めよう。新チーム結成後、これで公式戦は無傷の20連勝。昨秋の神宮王者が、準Vだった3年前に取り逃した大旗をはっきり視界にとらえ始めた。【八反誠】