春夏通算20回を誇る銚子商(東千葉)には親子3代での出場を目指す斉藤之将(ゆきのぶ)外野手(3年)がいる。

 斉藤之将外野手にとってラストチャンスだ。父俊之監督(49)が祖父一之さん(元監督=享年60)と踏んだ甲子園の土。「監督さんと一緒に絶対甲子園に行きたい」。

 3年前にさかのぼる。銚子商は甲子園出場。俊之監督が就任してから5年目にしてようやくつかんだ切符だった。私立校から合格通知をもらったが、迷いはなかった。「宿命だと思いました」と振り返る。しかし祖母悦子さん(72)からは猛反対された。夫の一之さんのもとでつらい思いをしていた、当時選手だった俊之監督の姿を見ていたからだ。それでも押し通した。唯一、母正代さん(48)に弱音を吐くこともあるが、帽子の裏に書かれた「3年間は親子じゃない」の文字には重圧に耐える決意が表れている。

 3年になり、ようやくレギュラーの座をつかんだ。打撃の調子は上向いているが「自分が打たないと監督の息子だから試合に出ていると言われる」と緊張感を持って練習に取り組む。斉藤監督に対してはグラウンドでも家でも「監督さん」だ。1、2年のころは家で顔を合わせるのも嫌だった。今でも家での会話は少ないが、野球のことを少しずつ話すようになった。「甲子園に行って銚子商で良かったと思いたい」と最後の夏にすべてをかける。2人が親子に戻るのは甲子園から帰ってからだ。