<高校野球南大阪大会:近大付8-7PL学園>◇27日◇決勝

 自分より体一つ小さな先輩を、PL学園勧野甲輝(かんの・こうき=1年)左翼手が抱き起こした。サヨナラ負けの幕切れ。左翼の守備位置から一塁側ベンチに戻る途中で、築山孝弘二塁手(3年)がうずくまって泣いていた。「築山さん、帰りましょう」と、足が前に進まない先輩の腕を取り、1年生4番は引きあげた。

 1年夏(83年)の清原に並ぶ大阪大会2号を打った。1-1の3回2死一塁で左翼スタンドに逆転2ラン。さらに4-2の7回1死満塁で、2点適時打。大会通算打点は14となり、1年夏の清原の6打点を大きく上回った。決勝で先発し、5回途中まで2失点。リードを守って左翼にさがった。「4番投手」として力をつくしながら、それでも甲子園に行けなかった。「野球でこんなに悔しいのは初めてです」。目は真っ赤だった。

 藤原弘介監督(34)からは、周囲への感謝を忘れないことを教えられた。謙虚な態度を、勧野は忘れなかった。クールダウンのプールで2、3年生にいじられている勧野を見て、監督は1年生が心技両面で完全に居場所を得たことを確信した。

 「ポスト中田翔」と期待された大会で、清原のあとを追える力を証明した。新怪物は「精神的にも強くなる。必ず次の大会で甲子園に出ます」と誓った。【堀まどか】