<アナタと選んだ史上最高物語(6)豊作年編>◆史上最高の豊作年ベスト10<1>松坂世代=98年<2>KKコンビ=85年<3>PL学園立浪ら=87年<4>田中・斎藤ら=06年<5>打倒池田世代=83年<6>ダルビッシュら=04年<7>春は浪商・夏は四日市=55年<7>元木・大越ら=89年<7>イチロー世代=91年<7>新浦・大島ら=68年【最高は98年「松坂世代」】

 私は団塊の世代だ。1947年生まれは育英・鈴木啓示、天理・門田博光、大鉄・福本豊、市和歌山商・藤田平、岡山東商・平松政次、甲府商・堀内恒夫、銚子商・木樽正明らキラ星のような名選手が居並ぶ。48年生まれも能代・山田久志、PL学園・加藤英司、大阪学院・江夏豊ら。それで私が生まれた49年…。同い年の「浪速の春団治」がこう言うのだ。「ワシが高3の夏に甲子園に出た時、新聞にこう出たんや。表の江島、裏の川藤、大きな見出しやったぞ」。平安・江島巧と若狭・川藤幸三が2大巨頭。プロでもそれなりに活躍したご両人には失礼ながら、2つ年上の世代と比べて何たる落差…。世代格差というヤツは、この世界には厳然としてあるようである。

 こんな古くさい黄金世代のことなど誰も知らないだろう、とタカをくくっていたら、もの凄い意見に出くわした。55年こそが史上最高の豊作年だった、というものだ。「春は浪商、夏は四日市が優勝した年で、この年のスーパースターは投手の前岡勤也(新宮)と打者では坂崎一彦(浪商)でした」。左腕前岡は和歌山大会5試合でノーヒット・ノーラン2回、5試合で打たれたヒットは計5本という成績だった。この新宮と浪商が夏初戦で激突、前岡が投げ勝って最強と謳われた浪商を撃破したのだった。「しかも彼らだけでなく、甲子園には出られなかった米田哲也や稲尾和久ら、この年の3年生がその後10年間プロ野球の中心として活躍した」のだから、第1期黄金世代と位置付けるべきかもしれない。

 桑田、清原のKKコンビが甲子園で暴れ回った85年が2番目の得票数。その2学年下の87年は「PL学園の立浪、野村、橋本、片岡、常総の島田、仁志、東亜の川島、尽誠の伊良部らがいた」ので3位。06年の斎藤佑樹(早実)、田中将大(駒大苫小牧)の両雄がいた世代を挟んで5位には83年が入っている。しかも、この年代の選手も結構渋いのだ。「打倒池田を合い言葉に強豪が集結した。マイク仲田(興南)、津野(高知商)に前橋工・渡辺、中京・野中、創価・小野、市尼崎・池山、そして池田・水野らがいた」。83年から1年置きに豊作年が訪れたわけで、この5年間は、高校野球の黄金時代だったろうか。

 しかし、やっぱり最高の豊作年は98年にとどめを刺すのだろう。世に言う「松坂世代」。世代に自分の名前を冠された松坂大輔は凄いが、その世代の顔ぶれはなるほど粒揃いだ。「150キロの松坂、新垣(沖縄水産)に加え矢野(高鍋)藤川(高知商)多田野(八千代松陰)ら、左腕では寺本(明徳義塾)杉内(鹿児島実)和田(浜田)ら多数。打者でも古木(豊田大谷)吉本(九州学院)後藤、小池(ともに横浜)東出(敦賀気比)実松(佐賀学園)と…」いたわけだ。確実にプロ1チームの投手陣を賄える人材が揃っていた。

 あれから10年。90回記念大会の今年はどんな選手たちが甲子園を駆け抜けるのか。新しい黄金世代となるのだろうか。(つづく=敬称略)【編集委員=井関

 真】

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