<高校野球神奈川大会>◇26日◇準々決勝

 プロ注目の長距離砲、横浜・筒香(つつごう)嘉智内野手(3年)が4強入りを前に9-10のサヨナラ負けした。9回に4点を挙げて延長に持ち込んだものの、筒香は不発。自らの失策から横浜隼人に決勝点を奪われた。2年連続甲子園はならず、高校通算69本塁打で最後の夏を終えた。

 筒香に願ってもない打席が回ってきた。9回、4点差を追いつき、なおも続いた1死二、三塁だ。安打でも勝ち越せる。5球目、内角球がきた。強振する。ところが打球は舞い上がることなく、一塁手前へ。勝ち越せなかった。「体が先に開いて、バットの先に当ててしまった。打ちたい気持ちが先行してしまった」。筒香が最後の打席を力なく振り返った。

 感情が高ぶって迎えた打席だった。この回の攻撃に入るとき、筒香の目から涙がこぼれた。最後の攻撃で4点差。もう自分の打席はないかもしれない。8回2死一、二塁の打席では勝負してもらえなかった。「いつも冷静でいられるわけじゃない。こういう試合では特にイラッとしてしまいました」。このとき、筒香は横浜隼人ベンチをにらみつけた。

 主将として期待にこたえられないもどかしさ。そんな感情の揺れが延長10回2死、思わぬ守りのミスとして出てしまう。三塁前に転がったゴロを捕球はしたものの、一塁に悪送球。走者を二塁に進めた。直後に、右前打が出て生還された。「どうしてもアウトにしたいと思って投げてしまった…」。4強を前にサヨナラ負け。70号が出る前に、筒香の夏は終わった。

 渡辺元智監督(64)はそんな主砲を責めなかった。「筒香も人間だな、と。気がはやった。打つだけじゃだめだということが分かったと思う。(冷静さを欠くなど)きちっとした姿勢ができてなければバッティングにも響く。今後に生かしてくれれば」と話した。

 試合後、真っ赤な目をした筒香から出たのは感謝の言葉だった。「悔いはありますが、横浜高校で野球を教わり、監督さん部長先生はじめいろんな人に感謝です」。今後、注目されるのは進路だ。「これから話し合いますが、プロに行きたいです。チームのためにプレーできる選手をこれからも目指します」。プロ希望をはっきり口にした。「ハマのゴジラ」が、新たな世界での躍進を誓った。