<高校野球静岡大会>◇27日◇準々決勝

 69年ぶりの甲子園を目指す島田商が、戦後静岡初の3年連続出場を狙った常葉学園菊川を9-8で撃破した。9-4と大量リードした7回終了後に大雨で中断。2時間32分後の再開から、昨夏全国準V校の猛追を受けたが、1点差に迫られた9回2死一、三塁で松浦一球(かずき)投手(3年)が、最後の打者を三振に仕留めた。

 松浦は、自身の名前通りその「一球」に魂を込めた。1点リードの9回表2死一、三塁。フルカウントから投じた直球は、内角低めいっぱいに決まった。5時間16分の死闘の最後を締めたエースは、駆け寄った鈴木貴記捕手(3年)と抱き合った。「思い切り腕を振って投げました。めちゃくちゃうれしかった」。渡仲正行監督(29)は「疲れたあ~。でも感動しました。さすが背番号1ですね」とうれし涙を流した。

 古豪島商の「2枚看板」の踏ん張りが、平成の王者菊川の強力打線を抑え切った。先発の西本拓哉(3年)は、ここまで3戦連続コールド勝ちの相手打線に14安打を打たれながらも、中断時まで4失点と耐えた。中断中には、松浦に「いつでも行ける準備をしておいてくれ!」と頼み込んだ。松浦は、その言葉に応え懸命に、ピッチを上げて肩をつくった。西本は試合前から「肩がいつもより上がっていない気がした。中断で肩が冷えて、さらに悪化した。でも松浦が抑えてくれると信じてました」と打ち明けた。試合再開後、5点のリードが3点となった9回1死満塁。松浦は「西本ばかりに負担はかけさせられない」と意気込んでマウンドに上がった。2人分の思いを込めて、最後の打者を三振に封じた。

 打線も燃えた。今大会無失点だった常葉菊川の萩原から、長短17安打で9点を奪った。3回裏1死一、二塁から右前に勝ち越しの適時打を放った山田公平三塁手(3年)は「最高でした」と満面の笑みを浮かべた。掛川東中時代から好投手で知られた萩原に、5月の練習試合でも抑え込まれていたが、最後の夏にリベンジした。「いつか必ず打ってやる、と思っていました」と打ち明けた。

 常葉菊川の3連覇を阻んでの9年ぶりの4強進出。「満足することなく、あと2勝」と渡仲監督。1940年(昭15)以来、実に69年ぶりの聖地が見えてきた。【湯浅知彦】