<高校野球西東京大会>◇3日◇1回戦

 西東京大会で昭和一学園が八王子実践に3-0で完封勝ちした。亜大野球部OBの多田倫明監督(29)が注入した「亜細亜魂」を胸に、ケガでプレーが危ぶまれていた岡田涼捕手(3年)が復帰し完封を演出してみせた。

 涙があふれて止まらない。昭和一学園の岡田主将は「最高だ、本当によくやった。次も頼むぞ」と多田監督に声を掛けられると、1人だけ号泣した。「頑張れ」「泣くな」と笑顔のチームメートから声が飛ぶが、20分たっても「涙が止まらないッス」と声を震わせていた。亜大野球部時代、日本一を経験した同監督に鍛えられ「全力疾走、凡事徹底」がモットーのチームを主将としてまとめた。

 巧みな配球で八王子実践打線を翻弄(ほんろう)した。序盤、大賀龍稀投手(3年)が制球に苦しむと緩いカーブを多投させ、130キロ前後の直球を効果的に使った。四球、失策後の初球は直球狙いを見透かして、あえてワンバウンド気味の変化球を要求。1回2死一、二塁では高めの直球、2回は2死満塁のピンチを外のスライダーで三振を奪った。3回までに奪った5つの三振すべてが空振りで、勝負どころでは相手に打撃をさせなかった。守備のリズムと攻守交代の全力疾走が3得点につながった。

 先週の練習試合で走塁中に右太もも内転筋の肉離れを起こしていた。診断は全治1カ月。2日前までは松葉づえをついていたが、あきらめなかった。監督に紹介された治療院ではり治療を受け、動けるまで回復した。「怖かったけどグラウンドに入ったら関係ない」とケガを恐れず、気合でプレーした。「うちの野球を象徴する選手」と監督も絶賛する。次戦も全力疾走の亜大魂で突破する。【木南友輔】