<高校野球埼玉大会>◇9日◇1回戦

 埼玉大会が開幕し、鷲宮が5-0で新座柳瀬を下して開幕戦を制した。春季県大会は、部員の部内暴力やいじめが発覚して出場を辞退。日本学生野球協会からは4月19日から2カ月間の対外試合禁止処分を受け、約3カ月ぶりの公式戦。エース北口直希投手(3年)が、スライダーを低めに集めて1安打で完封し、3番谷沢由浩内野手(3年)が先制2ランを放つなど、ブランクを感じさせない試合運びで、初の甲子園に向けて好発進した。

 最後の打者を空振り三振に仕留めると、鷲宮のエース北口は、小雨がパラつくマウンドでガッツポーズを決めた。8回を終えて許した走者は3回に四球で出した1人だけ。開幕戦史上初のノーヒットノーラン達成かとスタンドの声援が増した9回、先頭打者に右前に運ばれたが、次打者は併殺打に仕留めた。「調子は良かった。スライダーが曲がっていたので軸にして、真っすぐを見せました」と、完封勝利を振り返った。

 鷲宮は4月に部内暴力が発覚し、日本学生野球協会から6月19日まで2カ月間の対外試合禁止処分を受けた。春の県大会は出場を辞退。不祥事発覚後、チームの雰囲気は落ち込んだ。4月から就任した柿原実監督(39)は「いろいろあったので(練習で)追い込むところも追い込めず、心配でした。メンタル面のケアも心配で、カウンセラーに入ってもらったりして」と振り返った。処分が決まるまでは全体練習を控え、自主練習のみ。夏に向けての重要な時期に個人練習は1カ月間続いた。

 5月8日の全体練習再開後、投手陣は夏の連戦に耐えるためのスタミナ強化を行った。左翼と右翼のポール間を10本走り、その後さらにダッシュ。北口は1日100球の投げ込みを欠かさず、紅白戦やブルペンで調整を続けた。「実戦感覚はなかなか取り戻せなかったけど、街の人に頑張れと声をかけてもらって、やってこられた」と感謝の言葉を口にした。2回戦は13日の草加西戦。「謙虚な気持ちで1戦1戦しっかり勝って、甲子園に行きたい」と力強く話した。【保坂恭子】