<高校野球静岡大会>◇19日◇2回戦

 8校あるシードのうち焼津中央が初戦で敗れた。6-2と波乱を起こしたのは引佐。昨年初戦突破するまで10年連続白星のなかった苦労の時代を乗り越え、28年ぶりに3回戦進出を決めた。

 焼津球場の第1試合。引佐ナインは浜松市引佐町から2時間かけてやってきた。焼津中央は徒歩5分。完全アウェーの球場で、引佐・草川昌輝監督(38)は選手に魔法をかけた。「お前たちはへちょい(下手)。だから、シード校を倒すとしたら相手の初戦しかない。4-3で勝つ!」。

 言葉通り、強豪でも初戦はガチガチだ。一方、引佐は1回戦で接戦を制し、勢いに乗る。1回表1死一、三塁。制球に苦しむ焼津中央・望月の表情を見て取った草川監督は、4番大石良樹外野手(2年)にカウント0-2からスクイズを命じ先制した。「へちょい4番」は「バント、得意なんです」と、3回にも犠打を決めた。

 エース影山拓矢(3年)は、変化球を低めに集めた。緩いボールほど鋭く腕が振れていた。「緊張しているだろうから、攻めていきました」。そんな全力投球は、肝心なところで役に立つ。初めて失点した7回、なおも続くピンチで最後に選んだのは直球だ。鋭い腕の振りに変化球を予想した打者は、見送り三振に倒れるしかなかった。

 全力で打って投げて、つないだ。「へちょいやつら」は草川監督の予言より、1失点少なく勝った。「夏は選手が大きくなるから」。これも魔法か!?

 また成長したナインが、3回戦に臨む。【久我悟】