<高校野球青森大会>◇24日◇決勝

 八戸工大一が3-0で光星学院を下し、12年ぶり5度目の甲子園出場を決めた。エース中山勇也(3年)が3安打完封。1番下畑大輝(3年)の適時打2本と敵失で挙げた3点を守り切った。昨年まで11年続いた夏の「青森山田、光星学院時代」にピリオドを打ち、新時代を開いた。

 ウイニングボールは中山が捕った。9回2死、相手打者の打球は鋭い投手ライナー。中山が好捕し、両手を高々と上げた。ナインが駆け寄り、抱き合った。総立ちの応援席に大歓声がとどろいた。青森山田を破った光星学院を倒し。強い八戸工大一がよみがえった。

 中山が大一番で快投を演じた。強打の光星学院打線相手に強気で攻めた。奪三振は5。内角への速球やスライダーで打たせて取った。「リズムに乗れた。今までやってきたことや仲間を信じて投げた。優勝できたから100点です」。

 一昨年春、甲子園に春1度、夏4度導いた山下繁昌前監督(56=現総監督)から、教え子の長谷川菊雄監督(33)にバトンタッチした。新監督は礼儀や生活、精神面の指導に力を入れた。中山と4番田中大樹(3年)はトイレ掃除の当番。前日(23日)とこの日午前に練習で借りた青森商でも、当番を忘れなかった。

 練習前と試合前はスピーチ訓練を課した。志願者が手を挙げ、自分の目標などを話す。みんなが熱心に聞くことで一体感やモチベーションが上がる。この日は中山が担当。試合前、応援席の部員とグラウンドの選手たちがネット越しに組んだ円陣で「3年間、培ってきたものを全部この試合にぶつけよう」と話した。ムードは最高に高まった。

 「バントはアウト1個もったいない」というのが長谷川監督の持論。5回裏無死一塁でも次打者に強打を指示。敵失を誘い、2、3点目を挙げた。「昨日から強気のサインを出すぞ、と言っていた。それによく応えてくれた。目標であるベンチもスタンドもワクワクする野球をやってくれた」と選手をたたえた。

 ついに甲子園。春は87年にベスト8進出したが、夏はまだ白星がない。「甲子園でも強気で攻めの投球をしたい」と中山。ひのき舞台で八戸工大一の新たな歴史をつくる。【北村宏平】