<高校野球静岡大会>◇25日◇浜松球場◇準決勝

 連覇を狙う第5シード常葉学園橘が、第1シード静岡に5-4で逆転サヨナラ勝ちし、常葉学園菊川との決勝史上初の兄弟校対決が実現した。1点を追う9回1死二、三塁から小岱太志三塁手(3年)が中前へ殊勲打を放った。

 絶叫した。サヨナラを決めた瞬間、右手を、左手を何度も突き上げた。仲間からもみくちゃにされると、普段は冷静な小岱も興奮を抑えきれなかった。高校に入って自身初のサヨナラ打は、劇的な逆転打。

 小岱

 最初は冷静な気持ちだったけど、みんなが迎えてくれてうれしくて、うれしくて…。少し殴られたのもあったけど。あそこで打てなかったら野球が嫌いになったと思う。あそこで打てて、また野球が好きになりました。

 冷静に狙っていた。1点を追う9回裏、伊藤圭(3年)が出塁し、犠打で進塁。続く代打の渡辺史典(3年)は死球でつないだ。迎えた初球は暴投。続く2球目だった。「暴投の後の最初の球。絶対にストライクを取りに来ると思った」。真ん中に入った甘い直球を、センターへ返した。黒沢学監督(33)は「うれしいの一言です。途中から出た3年生がつないでくれた。チームのつながりがサヨナラにつながった」と喜んだ。

 常に思い描いてきた場面だった。練習後の寮で、小岱はいつも1人バットを振った。これまで対戦した苦手な投手を相手に、イメージするのは負けた状況での最後の打席。「追い込まれた場面でどう振るか。どうサヨナラを打つか」。前夜、チームは浜松市内のホテルに泊まった。夜のミーティング後、もう1度駐車場でバットを振った。

 昨夏も準決勝で静清工(現静清)にサヨナラ勝ち。勢いのまま決勝は浜名(10-0)に大勝した。同じ状況で迎える2年連続の決勝戦。史上5校目の連覇を懸けた相手は兄弟校の常葉菊川だ。「簡単にはいかないけど、相手の打撃を越える打撃で打ち返したい」。名前が示す「太い志」がかなう瞬間は、目の前だ。【今村健人】